先週末にかけてジャスダック、マザーズ、ヘラクレスの新興市場に上場している主力IT・ネット関連銘柄が軒並み急落する展開となり、個人投資家の投資マインドが一段と冷え込むのではないのかとの懸念が深まっている。新興市場にとって波乱要因とされてきたライブドアが、4月14日に上場廃止となり、相場回復に期待が寄せられていたものの、その後軟調展開が続いて先週後半から下落が加速する展開となってしまった。
下落のきっかけとなったのは、携帯電話向け情報配信大手でジャスダック市場上場のインデックスの大幅な業績下方修正だった。4月19日に、2006年8月期の通期業績予想で、連結経常利益の下方修正を発表した。国内事業の好調で2006年8月期の連結売上高については、従来予想の1050億円から1100億円へと上方修正したものの、海外子会社の利益計画が当初予想に比べて未達となることから、経常利益は従来予想の110億円(前期比49%増)から81億5500万円(同17%増)へと大幅な下方修正となる見通しとしている。
同時に発表した2006年2月中間期の連結経常利益は、前年同期比29%減の27億7000万円になったようだとした。従来予想は同3%増の40億円だった。こうした大幅な下方修正となったのは、海外コンテンツ(情報の内容)事業の利益計画が未達となったためだ。欧州子会社で新サービスの投入が遅れ、北米子会社「モブリス」の収益化も遅れているという。
この業績の下方修正を受けて同社の株価は、翌日の4月20日に一時前日比ストップ(4万円)安の16万4000円(終値は16万6000円)まで売り込まれた。21日も終値は1万8000円安の14万8000円と大幅続落となっている。4月3日には25万3000円の高値をつけていただけに、わずか3週間で株価が40%以上の急落に見舞われたことになる。これまで同社は、新興市場の盟主として成長性の高い銘柄として投資家に評価されてきただけに、個人投資家からの失望売りも出ているようだ。
証券会社からも投資判断の引き下げが相次いでいる。メリルリンチ日本証券は、4月19日付けでインデックス株の投資判断を「中立」から「売り」に引き下げた。株価について妥当範囲が上限を17万5000円から15万3000円に低下したとしている。このリポートでは「携帯電話向け1セグメント放送関連銘柄として、漠然とした期待を受けてやや割高な株価を継続していたと考えられる。しかし、今回の会社予想の下方修正により、当社の厳しい現実を株式市場は直視せざるを得ないだろう」としている。
さらに、三菱UFJ証券は4月20日付で、インデックス株の投資判断を従来の「3(中立)」から「4(やや弱気)」に引き下げた。同証券はリポートの中で、「国内のモバイルコンテンツ・ソリューション事業は順調に利益が拡大しているものの、海外コンテンツ事業は市況環境など変動要因が多く、利益の立て直しには時間がかかる可能性が高い」などとしている。
USENの見通しが追い打ちこのインデックスの株価急落に追い討ちをかけるように、有線放送・カラオケの大手で光フィバー高速ネット接続も展開し、ヘラクレス市場に上場するUSENが4月20日に、2006年8月期の業績見通しについて大幅な下方修正を明らかにし、翌日21日の市場では寄り付きからUSEN株に大量の売り紋が殺到して、売り気配を切り下げ大引けでは前日比ストップ(400円)安の1995円となった。
USENは2006年8月期の2月中間期、通期業績の下方修正を発表したことが嫌気された。2月中間期の連結経常損益は前回予想の10億円の黒字から19億2500万円の赤字(前年中間期実績は25億円強の黒字)になった。2006年8月通期の連結経常利益を、従来予想の85億円から10億円に減額している。前期比35%増益予想だったが、修正後は同84%減益となる。無料動画配信サービス「Gyao(ギャオ)」の視聴登録者数は当初計画上回ったものの、広告受注から売上計上するまでのタイムラグが生じ、また、加入促進のためのコンテンツ費、広告宣伝費などが膨らみ広告収入が計画未達となった。
4月21日にJPモルガン証券はUSENの投資判断を従来の「ニュートラル」から「アンダーウエート」に引き下げ、妥当株価を1900円とした。
USENの業績下方修正が発表されたのは20日引け後の午後3時30分からだったが、それに先立つ同日の後場寄り付きから大口の売り注文が殺到し、一時は前日比330円安の2310円まで急落(終値は同245円安の2395円)した。市場関係者のあいだでは「業績下方修正の前に大口の売りが先行したことにいて様々な憶測が浮上しており、これも翌日の株価ストップ(400円)安の引き金となったようだ」との見方も出ている。
USENの宇野康秀社長は4月21日に会見し、提携関係にあるライブドアとの経営統合を検討していることを初めて明かにした。宇野社長は「(USENとの)株式交換を軸に(完全子会社化を)検討している」と説明。ライブドア統合後のUSENが「(今期予想の約3倍に相当する)売上高5000億円規模のIT企業グループに発展する」との期待も示した。ただ、統合実現にはライブドア株主の同意が必要なため、「USEN自身の業績向上が先決」との厳しい見方もある。
外国証券のストラテジストは「IT・ネット関連銘柄の代表格であるインデックスとUSENの思わぬ業績予想下方修正に伴う株価急落で、新興市場は非常に厳しい状態にある。さらに、一見堅調を維持しているかに見える東証1部市場もトヨタ自動車、ソニー、キヤノン、京セラ、武田薬品工業といった日経平均225種銘柄採用の国際優良株が中心に買い進まれ、日経平均だけは年初来の高値権を維持しているものの、ソフトバンクが年初来安値圏に沈んでいるなど個人投資家に人気のある中小型の材料株には買いが手控えられる傾向が続いている」としている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス