先週末の12月22日、内需関連業種に遅れをとりながらも、ようやく堅調な推移を見せはじめたハイテク株の物色に冷水を浴びせる事態が株式市場で発生した。寄り付き前に「HDD(ハードディスク駆動装置)世界最大手の米シーゲート社が、同業界4位のマクスター社を買収する」と発表し、これに伴って株式市場に、国内のHDD向け部品(磁気ヘッド)メーカーの収益に悪影響を与えるのではとの懸念がひろがり、TDK、アルプス電気などの株価が急落した。
TDKの22日の株価は、寄り付きから大量の売り物を浴び、売り気配を切り下げる展開となり、大引けは前日比1000円ストップ安の8690円まで売り込まれた。アルプス電気の株価も大引けで前日比230円安の1640円と大幅安に見舞われた。
HDDの世界最大手の米シーゲートは米国時間12月21日、約19億ドルで同業界4位のマクスターを買収することで合意したと発表。買収後のHDD市場でのシェアは、シーゲート28%、マクスター15%の両社を合計すると43%と圧倒的なものとなる。買収の目的について、シーゲートでは「統合会社の規模が拡大することに伴い、オーバーオールの生産コストを削減し、より革新的な製品をより競争力の高い価格で提供できるようになる」としている。
マクスターはHDD用MRヘッドを全量外部から調達しており、TDKの主力事業であるHDD用MRヘッドの最大顧客となっている。TDKの2005年度下期におけるマクスター向けの売上高は417億円となっており、これはTDKの「記録デバイス」部門の上期売上高1403億円の約30%に相当する。連結ベースの全体売上との比較では10%に相当する。ところが、シーゲートはMRヘッドの全量を内製化しており、今回の買収によりマクスターがMRヘッドの調達先を現在のTDKとアルプス電気からシーゲートに切り替える懸念が発生しているわけだ。
今回のシーゲートによるマクスター買収による影響について外国証券のアナリストは「磁気ヘッドを製造していないマクスターは、TDK、アルプス電気のヘッドの大きな顧客である。磁気ヘッドをすべて内製化しているシーゲート傘下にマクスターが入るとなると、いずれマクスター分もシーゲートのヘッドを使うようになると考えるのが自然。しかし、採用する部品に変更があった場合、HDDメーカーが納入先のPCメーカーに対して、認定試験を改めてしてもらう必要があり、その手間やコストをPCメーカーが嫌うケースもある。また、買収完了までに時間がかかることを考えると、マクスターが磁気ヘッドの供給元を、今すぐ変更することはなさそうだ」としている。
各証券会社も相次いで投資判断や目標株価の変更を発表した。ゴールドマン・サックス証券では、TDK、アルプス電気両社のレーティング(投資判断)を「インライン(中立)」から「アンダーパフォーム(売り)」に引き下げ。UBS証券でもTDKの投資判断を「バイ(買い)2」から「ニュートラル(中立)2」、目標株価を1万3000円から1万円へ引き下げ、アルプス電気は「リデュース(弱気)2」継続で目標株価を1700円から1350円へ引き下げた。
さらに、モルガン・スタンレー証券でもTDKの投資判断を「オーバーウエート(買い)」から「イコールウエート(中立)」へ引き下げた。みずほ証券では両社の投資判断を「3(中立)」から「5(弱気)」へと2段階引き下げた。ただ、今回の買収によってTDK、アルプス電気への影響は避けられないものの、ほかへの波及は軽微にとどまり、悪影響は限定的とみられている。
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