4月20日の東京株式市場で、NTTドコモの株価が8日ぶりに反発した。20日付の日本経済新聞が1面で「NTTドコモはクレジットカード国内2位の三井住友カードに資本参加し、クレジットカード事業に進出する」と報じたことを好感したものだ。同日のNTTドコモの株価は、終値で前日比3000円高の16万8000円まで買われる結果となった。
報道によれば、NTTドコモは三井住友カードに最大33.4%出資し、携帯電話をカード代わりに使うサービスを共同展開するという。また、クレジットカード最大手のJCBとも出資を含む提携交渉に入ったとされ、成長が鈍化している携帯電話市場から、資本および業務提携をテコに金融業界に進出し、新たな成長基盤を築く方針のようだ。
この報道に対し、三井住友フィナンシャルグループが20日にコメントを発表、「携帯電話を介した新たなビジネスモデルの創出について、さまざまな検討をしていることは事実だが、現時点において具体的に決まったものではない」としていた。NTTドコモも「具体的な決定事項はない」とコメントしている。しかし、本業の通信事業が完全な成熟市場となり、同業他社との競争も一段と厳しさを増すなかで、NTTドコモにとって電子マネーやクレジットカード決済などの金融関連ビジネスへの本格進出は、生き残りに向けての早急な課題となっていることは周知の事実といえる。
外国証券のアナリストは「かなり前から期待されていた金融関連事業への投資であり、好ましいことだ」と一応の評価を与えている。NTTドコモはすでに、FeliCa(非接触ICカード技術)を搭載して決済機能を持たせた携帯端末「おサイフケータイ」を実用化しており、クレジットカード業界との事業提携による「クレジットケータイ」実現に向けた動きは、十分想定できるものだ。
前出のアナリストによると、今後の具体的な事業展開として考えられるのは「キャッシュの豊富なNTTドコモが複数のクレジット会社と提携した上で、ICカードタイプのクレジットカード読み取り機の設置コストを負担し、これに伴って計上されるクレジットカードの売上高から一定額をNTTドコモが受け取るといったビジネスモデルが考えられそうだ」としている。
クレジット会社としても、常に携帯し専用の通信回線を利用して安全に決済処理ができる携帯電話の特性は魅力だろう。NTTドコモも、これまでは着信メロディーなど小額の定額コンテンツに限られていた決済代行業務が、クレジット会社との提携により大きな事業へと拡大できる。
ただ、中長期的に問題となる可能性があるのは、NTTドコモ自体あるいは、NTTブループが銀行業務に進出することになると、銀行系のクレジット会社との提携が不要となる可能性が出てくる点だ。
NTTドコモの最近の株価は、4月8日に18万4000円の高値をつけて以降急落トレンドとなり、19日には17万円の大台を割り込んで16万5000円となっている(21日の安値も16万5000円)。現在は全体相場が極端に軟調な状態にあるというマイナス材料があるものの、今回のクレジット会社との提携という材料に対してNTTドコモの株価の反応はあまりにも鈍いと判断せざるを得ない。株価が20万円を大きく超えるには、まだかなりの時間が必要となりそうだ。
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