文書作成ソフト大手のジャストシステムの敗訴は、株式市場でも大きな波紋を広げている。今回訴訟の対象となった内容が「コンピュータソフト関連企業にとってまったくの他人事とは思えない」(業界関係者)ためだ。市場関係者の見方と今後の株価の行方を探った。
2日のジャスダック市場で、ジャストシステムは寄り付きから大量の売り物を集め売り気配でスタートし、大引けでは値幅制限下限いっぱいのストップ(100円)安となり、500円の比例配分で、2万6800株の売買が成立した。そして、なお68万1900株の売り物を残した。
昨年8月に松下電器産業が提訴していた特許侵害に対して、2月1日に東京地裁がジャストシステムのワープロソフト「一太郎」、グラフィックソフト「花子」の各製品の製造・販売中止並びに製品の廃棄を命じたことが嫌気されたものだ。
同社はこの判決に対して2日にコメントを発表し、「今回の争点は『一太郎』の基本機能ではなく、当社としては特許に抵触するものではないと考えている」としている。このため同社は現在、東京高裁に控訴の手続きを進めており、2月10日に発売を予定している新製品の「一太郎2005」と「花子2005」は予定通り発売する方針だ。
一方、1日には4〜12月までの第3四半期決算を発表。連結最終損益は9億5600万円の赤字となったものの、毎期第4四半期に売上高が集中する傾向があり、「通期予想(9500万円の黒字)は十分に達成できる見通し」(会社側)としている。
今後の株価について多くの市場関係者は「製造・販売中止を命じられた製品は同社の看板商品だけに、当分下値追いの動きは避けられないだろう」との判断だ。その背景となっているのが、「一太郎」と「花子」は前期に全体の約40%の売り上げを稼いだ主力商品。特に地方自治体には一太郎が予想以上に幅広く普及しており、今回の判決に対する警戒感から他社の代替システムへの乗り換えが進み、業績の悪化も懸念されるという。
しかし、一部には「ジャストシステムのソフトに根強い固定ファンが存在するのと同様に、同社の株式についてもネットトレーダーのあいだでは人気には根強いものがある。これまで赤字の決算を強いられるケースが多かったにもかかわらず、株価があまり大きく下落しなかったのはそのため。ジャストシステムの株価が直近で450円(昨年12月21日)から615円(今年1月27日)まで約37%も上昇していたことが利益確定売りを加速している面もある。いまのところ、極端な業績への実害は避けられていることから、株価のこれ以上の大幅な下落はなさそう」(市場関係者)との声もきかれる。
ジャストシステムは2003年8月に「ジャストホーム2」が松下の特許権を侵害しておらず、特許法に基づく差し止め請求権が松下にないことの確認を求める訴えを起こした。東京地裁は2004年8月、ジャストの特許権侵害を認めない判決を下し、ジャストが勝訴したという経緯もある。
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