ソフトバンクの株価が戻り歩調となってきた。市場関係者のあいだでは「第1四半期の決算発表が株価反転上昇のキッカケになった」との見方があるものの、実際には、まもなく明らかにされる新規事業への期待思惑が買い人気につながっているというのが真相のようだ。
ソフトバンクが11日に発表した第1四半期(4〜6月)連結決算は、最終赤字が178億7600万円と、前年同期の347億3400万円の赤字から赤字幅が大幅に縮小した。ブロードバンド(高速大容量)通信事業の売上高増加が寄与した。ただ、ADSL(非対称デジタル加入者線)事業の赤字幅は直近の前期の4四半期とほとんど変わらない水準だった。
ブロードバンドサービスYahoo! BBの加入者が増えたことで、売上高は前年同期比41.8%増の1473億1100万円となった。営業損益は38億1900万円の赤字で、前年同期実績の営業赤字241億9700万円から大幅に赤字幅が縮小した。経常損益も116億6900万円の赤字となり、前年同期実績の306億3300万円の赤字から赤字額が縮小した。
営業損益は前期に続いて赤字になっているものの、代表取締役社長の孫正義氏は「2002年第4四半期の337億円の赤字をボトムにV字で改善している」と強気の姿勢をみせている。このうちブロードバンド事業では、2年前に2800円程度だったARPU(1加入者あたりの月間平均収入)が現在では4100円にまで伸びている。さらに、固定費は2年間で月額40億円前後とほとんど変動がない。これにより2年前には750円だった1加入者当たりの粗利益が現在では2460円に上昇している。「粗利益は3倍、ユーザー数は3倍で固定費は変わらない。これにより利益が10倍になっているので、正しいビジネスだ」(同)と強調した。
しかし、決算発表の席上で決算内容以上に注目を集めたのが、日本テレコムの買収、情報サービス会社のベルシステム24との包括提携などを布石として、ソフトバンクが新たに立ち上げようとしている新事業の動向だった。その新規事業の詳細はまだ明らかにされていないが、外国証券のアナリストは「ひとつのカギを握る可能性があるのがFTTH(光ファイバー)関連の事業ではないのか。ソフトバンクは、当初11月16日としていた買収完了予定を7月末に大幅に繰り上げて、総額3400億円の払い込みを完了して日本テレコムを傘下に収め、日本テレコムが所有する通信インフラとインターネット接続事業ODNの会員158万人を獲得している。さらに、ベルシステム24とのコールセンター業務の長期一括契約では、ベルシステム24によるBBコール買収と通信機器への設備投資、その後のソフトバンクへのリースバックを主な内容としており、サービスの開始時期を9月としていることから、まもなく新規事業の全貌が明らかになる可能性が高まっている」としている。
7月以降、主力ハイテク銘柄を中心に低迷が長期化している株式市場にあって、IT関連銘柄のなかでも一番の人気株であることを誰もが認めるソフトバンクに、低迷相場脱出の突破口を開く役割を期待する声もいぜんとして根強い。株価面では、新株予約権の行使価格である4907円を上回ることが当面の目標となりそうだ。(超眼)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス