IT関連の代表銘柄であるヤフーとNTTドコモの株価がさえない展開となっている。ヤフーは5月18日以来約1カ月ぶりに100万円の大台を割り込み、NTTドコモも当面の下値の節目とみられていた20万円を割り込んで、年初来安値(18.6万円)に接近してきている。
この2つの銘柄の軟調な株価推移の背景には、業績見通しなどとは関係のない市場内部的な需給面での特殊要因が存在している。東京証券取引所がこれまで様々な面から準備を進めてきたTOPIX(東証株価指数)の「浮動株指数化」への最終案が、6月下旬をメドに公表されるためだ。この最終案の公表を目前に控えて、特定株部分が指数算出から除外されることにより、「少数特定株」の持ち株比率の多い銘柄について、指数への組み入れ比率が低下することへの警戒感が強まっている。
TOPIXの浮動株化は、指数算出の際、上場株式から持ち合い株や親会社の保有分を除き、市場で実際に流通する株式のみで算出するもの。東証では、金庫株(自己株式)や上位10大株主・経営陣が保有する株などの固定株から投資信託やファンドを除いたものを浮動株と定義している。機関投資家が運用指標(ベンチマーク)として用いる株価指数は、流動性の高い浮動株の比率を調整した指数が国際的なトレンドとなっており、これに対応したもの。月内のTOPIX浮動株化の概要発表を先取りするかたちで、市場には思惑が高まっている。
発表される概要の内容で注目されているのは、既存のTOPIXを浮動株基準化するか(そうでない場合は、現行のTOPIXと浮動株重視の新TOPIXをしばらくのあいだ両方算出する)、また浮動化への日程はどうなるかなどだ。市場には、既存のTOPIXそのものを浮動株化し、第1回目の入れ替えは1年先の2005年夏ごろ(9月前後)になるとの見方が多い。また、入れ替えの回数も2回から3回以上に分ける可能性が指摘されている。今回の発表で日程などがどこまで具体的に示されるかは不明だが、今後の大きな方向性は判明すると見られている。
ヤフーの場合、大株主の上位10社と役員の持ち株を合計した「少数特定株主」の持ち分は、発行済み株式数の84%(2004年3月期末)に達しており、浮動株の比率が極めて低い。このため、TOPIXの浮動株調整では、指数への組み入れ比率が大幅に低下する懸念があるわけだ。また、国内外の機関投資家の多くはTOPIXを運用のベンチマークにしており、浮動株調整にあわせて、機関投資家のヤフー株売却に拍車がかかるとの懸念も出ている。24日は、ソフトバンク株主総会での孫正義社長の強気発言を受けて同社株価が大幅上昇し、それに連動してヤフーの株価も大幅反発となったものの、今後の株価推移からは目が離せそうにない。
なお、TOPIX浮動株化がプラスに働く銘柄は、NTT、トヨタ自動車、武田薬品などで、マイナスに働く銘柄はNTTドコモ、ヤフー、セブンイレブンなど。グループ会社の親会社には有利だが、子会社にはマイナス要因と見られている。
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