株式市場全般がこう着状態に陥るなかで、主力IT関連銘柄の株価の戻りも非常に鈍い状態が続いている。そうしたなか異彩を放つ反発ぶりを見せ、年初来高値に肉薄する軽快な値運びをみせているのがKDDIだ。株価の急反発を支えている追い風の内容を探った。
4月28日に発表されたKDDIの前3月期の連結決算は、売上高2兆8461億円(前々期比2.1%増)、経常利益2745億円(同2.4倍)、純利益で1170億円(同2倍)と連続して過去最高益更新を達成した。さらに今期の会社側見通しも、売上高2兆9820億円(前期比4.7%増)、経常利益3110億円(同13%増)、純利益1900億円(前期比62%増)と最高益更新基調維持となっている。
KDDIの業績が順調な推移をみせているのは、携帯電話のau事業が、加入者の好調な獲得継続に支えられて大幅な伸びをみせているためだ。加入者の増加により、au事業の前3月期の営業利益は前期比4.5倍の2395億円に達し、全体の利益の浮上に大きく貢献している。NTTドコモの前3月期の営業利益の伸び率が4.4%増に止まったことと比較するとauの利益貢献度の大きさが理解できる。また、今3月期のau事業の累積加入者数は1922万人(前期末比13.3%増、期中平均では16.7%増)と、引き続き順調に拡大する見通しにある。
外国証券のアナリストは「競争が一段と激化するなかで、加入者数の増加では使用頻度の高い若年層を中心にauが圧倒的な強さをみせている。会社側の業績見通しはかなり控え目であり、今期連結経常利益は3300億円レベルに上方修正される可能性が濃厚だ。ここ最近の逆行高ともいえる株価の上昇を支えているのは内外の機関投資家の買いとみられる。NTT、NTTドコモなど、ほかの大手通信会社のなかでは飛びぬけて業績が堅調に推移していることに加え、今期の連結予想PER(株価収益率)が14倍と割安水準にあることも買いの背景となっているようだ」との判断をしている。
さらに同社は5月27日、PHS事業を展開するDDIポケットについて、カーライル・グループと京セラに保有株の大半を売却することで検討に入っているとのコメントを発表している。これが実現すると、KDDIにとっては経営資源を携帯電話事業に集中できるというメリットが出てくるうえに、売却資金(2200億円程度とされている)を入手できることもあり、財務体質の改善も見込まれている。
KDDIの株価は、5月6日に67万2000円で年初来高値をつけたあと、全体相場の大幅な反落基調のなかで調整に入り、5月13日には58万7000円まで下落した。それを底に翌日から反発に転じ、多くのIT関連株が低迷を続けるなかにあってもほぼ一環して下値を切り上げる上昇基調をたどり、6月3日には一時64万8000円の高値をつけている。すでに押し幅に対する5月13日からの戻り率は70%に達しており、ほかのIT関連銘柄に比べて年初来高値を更新する可能性は高いといえそうだ。
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