昨年4月に、日経平均株価がバブル後最安値に急落する局面で、その要因のひとつとされ「ソニーショック」とも呼ばれた決算発表後の株価の下落を彷彿とさせられる動きが今年も起きている。4月26日に年初来高値の4710円をつけたソニーの株価が、翌日の27日に発表された2004年3月期決算と2005年3月期の業績見通しを受けて反落に転じ、先週末の5月14日には一時3980円(約15%の下落)まで売られたのだ。会社側が、今3月期の連結営業利益について1600億円(前期比62%増)と大幅増益と予想しているにもかかわらず、なぜ株価は急落しているのか。
ソニーの株価が今年も決算発表をきっかけに反落に転じた背景について外国証券のアナリストは「ソニーは今3月期の連結営業利益について、前期比62%増の1600億円と最悪期脱出を見込んでいる。ところが、事前のアナリスト予想が1800億〜2000億円となっていたことから失望売りを招く結果となってしまった」としている。
それではなぜ、大方のアナリストは今3月期の営業利益について1800〜2000億円と大幅増益を予想したのか。ソニーは前3月期に、構造改革費用の名目で1681億円という巨額なリストラ費用を計上した。今3月期には、これにより880億円程度の経費削減効果がすでに織り込まれていたためだ。したがって、会社側予想の1600億円から880億円を除くと実質720億円となり、リストラ以外での本業による営業利益に回復の兆しが見えてこないことになる。このことで投資家が警戒感を強めているのだ。
今3月期の業績見通しの中身を見ると、構造改革効果が出てくるエレクトロニクス事業では、「(薄型テレビやデジタルカメラなど)重点商品については、2003年度は国内中心だったが、2004年度以降は海外で拡大する」(湯原隆男常務)こともあり、増収増益となる。しかし、一方でゲーム、金融事業は減収減益、映画事業は横ばいとなるもようだ。構造改革費用を除く売上高営業利益率は前期の3.1%から今期は3.5%に上昇するが、目標として掲げる10%(2007年3月期)には依然として程遠い状態にある。
同社の業績低迷の背景をひとことで表すと、「本来は得意分野であるはずのデジタル家電分野での対応の遅れ」といえそうだ。よく引き合いに出される「ブラウン管テレビへのこだわりによる薄型テレビへの出遅れ」だけではなく、ビデオカメラ以外の分野では、同社のデジタル家電景気による恩恵は限られたものとなっている。
ただ、反攻の兆しがいくつか見受けられるのも確か。出遅れていたDVDレコーダーでは、ゲーム機能搭載の「PSX」はふるわなかったものの、「スゴ録」が昨年の年末商戦でヒット商品となった。今期は、海外販売を強化して、DVD販売台数で200万台(前期比3倍増)を目指す。また、パソコンのブランド名「VAIO」を他の機器にも広げた新製品を発表している。まず、第1弾商品としてHDD(ハードディスク駆動装置)搭載型の携帯音楽プレーヤーを発売した。今後VAIOブランドの新商品として、10シリーズ52機種を順次発売していく。さらに、今期最大の目玉商品で、会社側が「21世紀のウォークマン」と位置付けている携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル」(PSP)を年末商戦に向けて発売し、今期300万台の生産を計画している。また、このところ急ピッチで進んでいる円安(ソニーの今期為替想定は1ドル=105円)が、予想外の新たな追い風要因ともなっている。
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