日経平均株価が1万2000円台を回復するなど全体相場が上昇し、IT、ハイテク関連銘柄のほとんどが年初来高値(あるいは昨年来高値)を相次いで更新している。こうした中、主力銘柄の株価で最も出遅れているとされるのがNTTドコモだ。果たして第3世代携帯電話FOMAの本格普及期を迎えるNTTドコモの株価面での逆襲はあるのか。
第3世代携帯電話FOMAの好調が確認されているにもかかわらず、NTTドコモの株価はいまだに今年1月13日につけた25万1000円の年初来高値を更新できずにいる。この背景には、TOPIX(東証株価指数)の指数算出基準が浮動株ベースに移行する(当コラム2004年3月5日掲載分参照)可能性があり、この影響に伴う需給悪化懸念が反映されている点がある。さらに、ファンダメンタルズの面でも「来年度業績に対する不透明感」(準大手証券)があり、これを織り込む展開が続いているという。
すでに終了した2004年3月期の連結業績(米国会計基準)は、売上高が5兆340億円(前々期比4.6%増)、営業利益に営業外の費用を加味した税引前利益は1兆820億円(同3.7%増)。純利益は2002、2003年度に巨額の引当金を計上した海外投資の損失がなくなることから、6210億円(同2.9倍)と大幅に増加した模様だ。
現行第2世代のmovaは昨秋から加入者数が減少に転じたが、第3世代FOMAのエリアカバー率はすでに98%に達し、端末ラインアップも拡充したことで加入者数が急増。収益動向をみる上での重要指標である総合ARPU(加入者1人当たり売上高)は、前期通期ではmovaが9月中間期比60円減少したものの、FOMAは90円増加し、「加入者の8割が自社内移行。ヘビーユーザーを中心にFOMAへの乗り換えが進んでいる」(NTTドコモ)ことを裏付けた。
さらに今年度はFOMAが飛躍的に加入者数を伸ばす見通しだ。FOMAの契約数は2001年度末8.9万、2002年度末33万と立ち上がりは鈍かったものの、前年度に入ってからは順調な普及をみせはじめ、すでに「今年度末1000万契約」が業界のコンセンサスになりつつある。さらに、2月上旬から順次投入されたFOMAの新型端末機種「900i」シリーズは、使い勝手や機能面で高い商品性を備えており、2004年の国内携帯電話販売台数は2003年の5000万台から少し減少して4000万台程度となるものの、FOMA比率は50%を超えるものと見込まれている。
ドコモ側では機能を絞り込み、コストを抑えた普及価格帯モデルの投入も示唆している。今夏にはソニーとの提携による非接触型ICカード技術FeliCaを導入、電子マネーや個人認証、交通機関決済などの付加機能を搭載する予定だ。
今後の国内携帯電話市場の動向について準大手証券のアナリストは「シェア獲得のための乱売合戦が各社の収益力を低下させることはすでに経験済み。今後はシェアの奪い合いが利益最大化より優先されることはなくなる。携帯電話の国内市場は、価格競争を回避し、いかに付加価値を競い合うかの新たなステージに突入しつつある」としている。
今年度に業績底打ちが確認され、来年度が利益回収期とすれば、来年度は現在4300万人強のmova加入者がどれだけFOMAに移行するかが焦点となる。つまり、単純な純増加入者の動向以上にコストコントロールの手腕が問われることになりそうだ。
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