ソフトバンクの株価が先週後半、4月入りと同時に突如急騰しはじめ、5000円を大きく上回ってきた。新年度入りと同時のこの急騰劇の背景にいったい何があるのか。
ソフトバンクの株価は4月1日に突如急騰をみせ、一時前日比ストップ(500円)高の5370円(終値は5330円)まで買い進まれ、昨年11月7日以来約5カ月ぶりに5000円台を回復してきた。
株価が急上昇した背景について市場関係者は「全体相場が前年度末にかけての急騰の反動でやや一服状態となっていただけに、ソフトバンクのストップ高は注目を集めた。Yahoo! BBの個人情報流出問題などもあり、昨年秋以降ほとんど株価が上昇していなかった出遅れ感の強いソフトバンクだが、新年度入りをきっかけに証券ディーラーや個人投資家からのホットマネーが集中したようだ。全般相場の上昇によって、ソフトバンクの保有する株式の含み益が拡大してきたことが見直し買いの背景にある」としている。確かに、東証1部上場を果たした子会社のヤフーは株式分割後も順調な上昇をみせており、その分の含み益増加が主体となり、3月末現在ソフトバンクの株式含み益の合計は2兆3513億円と膨らんでいる。
さらに、クレディスイスファーストボストン証券が4月1日付でソフトバンクの投資判断を「NEUTRAL(中立)」から「OUTPERFOM(強気)」へと変更し、目標株価も従来の4400円から6000円へと引き上げたことも買い支援材料として評価されたようだ。
同証券のリポートによると「ソフトバンクの保有する公開・未公開企業の価値が大幅に上昇したことなどを考慮し、目標株価と投資判断を引き上げた」としている。また「3月のYahoo! BBの回線純増数は7万となり、個人情報流出問題に関しては最悪期を脱出したようだ。そう考えると、ヤフーやその他傘下企業の株価上昇に比べてソフトバクの株価上昇の度合いは低く、出遅れ気味」としている。
3月のYahoo! BB回線の純増数は7万と、2月の11万に比べて減少したものの、3月の解約率が、年度替わりによる引越し急増月にもかかわらず1.5%と前年同月並みに止まったことから、業績面で最大の懸案とされてきた「解約率の増加」が軽微に止まる見通しとなってきたわけだ。ソフトバンクの孫正義社長も、3月19日の自民党電気通信調査会で「営業の一部自粛や見直しなどで、3カ月程度は新規顧客の獲得は減速する」と発言していたものの、実際の悪影響は最小限に止まる可能性が出てきたといえる。
しかし、ソフトバンクの株価の先行きについては、楽観的な見方だけではない。外国証券のアナリストは「新規顧客の減少傾向については、もう数カ月先まで見て判断する必要がある。そしてむしろ、3本のCB(転換社債型新株予約権付社債)の転換価格は5488円、5957円、6493円(各500億円)であり、株価が上昇してこのCBの転換価格を越えてくると、CBから転換した株式の転換売りが出て、これが上値を抑える可能性も考えておかなければならない」としている。
いずれにしても、このソフトバンクという銘柄は、業績面のファンダメタルズや株式需給など通常の株価決定要因では図り知れない投資家の人気によって株価が大きく左右され乱高下をみせる習性があり、当面は目の離せない展開となりそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス