昨年12月には一時、3500円を割り込む場面もあったソニーの株価。それがいつのまにか4500円を上回り、5000円台をうかがう展開となっている。ソニーの攻勢で勢力地図に変化の兆しがみえはじめたDVD(デジタル多用途ディスク)業界の今後を探った。
DVDはいわゆる「デジタル家電の3種の神器」のなかでも日本メーカーのシェアが高く、市場規模が今後2〜3年間で飛躍的に拡大することが見込まれている。関連メーカーの収益にも大きなインパクトを与えることが予想される商品だ。
昨年の年末商戦では、家庭用ゲーム機「プレイステーション2」とDVDレコーダーが合体したソニーの新製品「PSX」が話題を集めた。ライバルメーカーは「あれはDVDではなくてゲーム機だ」と平静を装うものの、内心は穏やかではないはず。これまで松下電器産業を筆頭に、東芝、パイオニアの3社で世界シェアの90%を占めていたDVDレコーダー市場だが、ソニーの攻勢により業界の勢力構造が大きく変わりつつあるようだ。
ソニーは、昨年秋からのDVDレコーダー「スゴ録」シリーズに加え、「PSX」の販売が好調となったことから、年末には国内DVDレコーダーシェアトップに躍り出た。一時的にシェアを落とした王者の松下電器は、今・来期と引き続いて世界シェア5割という目標を変えていない。
しかし、焦点となるのはやはり利益だ。低価格で勝負に出たソニーでは「(販売台数が足りず)まだ利益には貢献していない」という状況が続いている。一方、デジタル家電用のシステムLSIを富山工場で増強するなど、内製化率を高めることで利益をねん出する松下電器からも「VTRのVHSは半値になるまで7〜8年かかったが、DVD(プレーヤー)の販売価格は2年ですでに半減した」と、短期間での急速な価格低下を嘆く声も聞こえてくる。
部品内製化の中でも、DVDに記録された信号を読み取る装置である光ピックアップは、DVDレコーダーのポイントのひとつとなりそうだ。パイオニアでは、第3四半期の利益をけん引したパソコン用の記録型DVDと光ピックアップを共有していることが、コスト面での強みとなっている。しかし、パイオニアはNECからPDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)事業の買収を発表しているものの、買収に伴って2011年3月を満期とするユーロ円建て転換社債型新株予約権付社債500億円(最大600億円)の発行を発表したことで、将来の1株利益の希薄化懸念から株価の戻りは鈍い状態となっている。
東芝はキヤノンと今春にも新会社を設立、2005年をメドに新方式の薄型テレビを量産する方針を打ち出している。さらに、半導体事業の採算の好転が評価されて株価は堅調な値運びとなり、500円台回復が目前となっている。
外国証券のアナリストは「DVD業界ではソニーが急速にシェアを向上させてきたことで販売価格のさらなる低下が予想される。こうしたなかで採算を維持していくには、内製化を含めて半導体をいかに低コストで調達するかが非常に重要だ。ただ、多くの電機メーカーが、今下期の為替レート予想を1ドル=105円レベルと想定していることから、ここにきての1ドル=110円という円安・ドル高傾向は(海外から半導体を調達している)日本メーカーにとって大きな追い風となりそうだ」としている。
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