オンライン証券会社や宿泊予約サイトなど異業種企業への積極的な買収戦略を展開し、ネット上の総合サービス企業へと脱皮をめざす楽天と、日本版のeBayを目指してオークション、ショッピング、広告などの中核事業拡大を狙うヤフーの2社が、オンライン業界での熾烈な争いを繰り広げている。両社の戦略の違いと将来展開を探った。
楽天は先週19日、2003年12月期の配当を倍増させ、年250円とする方針であることを発表した。前12月期の決算で、最終損益段階ではまだ赤字状態だが、営業利益と経常利益段階では過去最高を更新しているためだ。
同社の前12月期の連結業績は売上高180億8200万円(前々期比82.8%増)、営業利益47億5000万円(同86.2%増)、経常利益44億3800万円(同97.9%増)、最終損益526億4300万円の赤字(前々期実績32億7600万円の赤字)となった。
これは、ブロードバンドの利用者数が順調に拡大したことが寄与しているもので、「楽天市場」を中核にしたサイト内流通総額の極大化を目指した同社の「楽天1兆円プロジェクト」が、こうした市場規模拡大にマッチしているためだ。最終損益の赤字は連結調整勘定償却や固定資産売却損・除却損並びにオフィス移転費用などを特別損失として計上したためだ。
第4四半期(昨年10〜12月)の営業利益は19億2000万円だったが、今期から新たに加わるDLJディレクトSFG証券を含めると30億円強(前年同期比3.7倍)となり、これを年換算すれば4倍の120億円規模となる。今期の業績予想は未公表だが、「今期は非常に楽しみなものがある」(楽天代表取締役会長兼社長、三木谷浩史氏)としており、連結経常利益で少なくとも前期比2.7倍の130億円程度は確保できそうだ。今後はマイトリップ(旅の窓口)、DLJディレクトSFG証券とのシナジー効果を積極的に狙うほか、三木谷氏自らがポータルサイト(インフォシーク)事業の収益向上に取り組む。しかし裏を返せば、こうした複数のサイトや事業、さらにサッカーJリーグの「ヴィッセル神戸」の運営に到るまで、いかにして相乗効果を増幅させることができるかが同社の成長のカギを握っているといえそうだ。
一方、インターネット情報検索サイト最大手のヤフーが1月21日に発表した2003年10〜12月期の連結決算は、売上高が前年同期比55.4%増の200億円、純利益も同87.0%増の66億円と、ともに四半期ベースでは過去最高となった。
広告市場全体の伸びもあり、ネット広告関連売り上げが65.5%増の58億円と過去最高を更新。オークション事業も、2003年12月の取扱高が462億円と最高だったことなどが貢献し、大幅な増収増益を記録した。
同社はこれに伴い、2004年3月期通期の連結業績見通しで、売上高を723億〜755億円(2003年10月公表の予想は710億〜730億円)に、純利益も232億〜240億円(同220億〜226億円)に、それぞれ上方修正した。
ヤフーは、ネットビジネスの先駆者として、オークション、ショッピング、広告という基幹事業をより掘り下げて充実させることで事業全体の拡大を目指している。
ここで、2003年10〜12月期のヤフーと楽天の売上高、流通総額の比較をしてみると、まずネット広告では、ヤフーが58億3000万円なのに対して楽天(グループ)は6億7800万円。さらに、オークションの流通総額がヤフー13億3000万円に対して楽天3400万円、ショッピングではヤフーの1億1100万円、楽天3億3000万円となっている。こうした数値をみてもヤフーの優位性が鮮明だ。これをさらに充実させるためには、化粧品・トイレタリー、自動車、飲料(アルコール含む)などこれまでテレビ媒体への広告出稿が多かった業種からの広告出稿を拡大させることが今後の課題となる。さらに、動画広告の充実なども課題に挙げられる。
ヤフーは18日に、株式上場以来通算9度目となる株式分割(3月末割当で1株から2株)を発表した。これを好感し、19日の株価は一時200万円大台に迫り、分割考慮済みの修正値で2000年2〜3月のITバブル絶頂期の株価水準(2000年2月の高値は1億6790万円、分割考慮済み修正値で262万3438円)に突入しつつある。
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