ソフトバンクの株価が2月5日につけた直近の安値3470円から反転上昇軌道に乗り、今年になってからの高値だった1月20日の4330円を超えて4400円台に乗せてきた。この株価反転上昇のきっかけとなったのが、第3四半期(10〜12月)の連結決算の発表だったという。
ソフトバンクは先週の12日、今3月期の第3四半期連結決算を発表した。最大の注目点だった第3四半期の営業損益は66億円の赤字となり、赤字幅は第1四半期の241億円、第2四半期の151億円に比べて縮小傾向が鮮明となった。これまで同社の株価は、四半期決算の発表ごとに急落を繰り返し、さらに最近では大型ファイナンスが需給のかく乱要因となっていた。しかし、今回は発表翌営業日である今週16日の株価が前営業日比370円高と急騰したのだ。市場関係者からは「それまで沈滞していた全般の投資マインド改善にも大きく寄与した」(準大手証券)との評価の声も聞かれるほどの変貌ぶりだ。
同社のブロードバンドインフラ事業の営業赤字幅は、昨年度第4四半期を底に縮小傾向が続いている。ADSL事業の契約者数は1月末に382万件(シェア36.0%は単一事業者としてはトップ)となり、来月中にも目標としていた400万件突破が確実となっている。
さらに、同社独特の業績指標である「顧客獲得費用考慮前営業利益」は、獲得コストを前四半期並みに抑えたこともあり(そういえば最近街頭であの赤い紙袋を配布する若者の姿をあまり見かけなくなった)、54億円の黒字に拡大した。ARPU(1顧客当たり平均収入)は4000円台となり、解約率も1%前後で安定しているほか、昨年末に実施したファイナンスで手元流動性も豊富になり、期末の社債償還にも十分対応できるという。決算発表会見の席上で孫正義社長は「今後1年以内に上場予定のグループ会社が30社近くある」とし、株式含み益が急速に拡大することも強調した。
もっとも、同時に「契約者数600万件で営業利益1200億円」を目指すとする新たな目標値も設定し、「来期第1四半期にかけては再びアクセルを踏む可能性もある」(孫社長)と、顧客獲得コストが膨らむ可能性を示唆している。再来年度中間決算までの18カ月、単純計算で毎月11万契約が必要だが、これは同業他社やFTTH(光ファイバー接続)サービスとの競合激化を差し引いても、現在の純増ペースからみて達成不可能な目標数値ではない。
ただ、アナリストのあいだでも、この新目標に対しての評価は2つに分かれている。「現在の市場環境で利益確保よりもシェア拡大を優先するのは通信事業者として当然の戦略」(国内系大手証券アナリスト)という意見がある一方で、「利益目標の達成には、ARPUを相当高い水準に引き上げる必要がある」(外資系証券アナリスト)、「解約率1%、1人当たり加入者獲得コスト3万円の前提条件が今後悪化するのは必至。コンセンサスとなっている来期第3四半期の黒字化は、第4四半期〜再来期第1四半期へずれ込む可能性がある。目標数値の達成が業績のピークになるのでは」(準大手証券アナリスト)との見方もある。
株式需給面でも、ファンダメンタルズにおいてボラティリティ(変化率)が同社株の最大の魅力でもありリスクでもある。市場エネルギーの先行指標銘柄として、再び注目が高まるのは間違いなさそうだ。
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