日立製作所の株価が、1月下旬に入って昨年9月以来の高値を更新、700円台での活躍となっている。主力の総合電機の多くが相次いで昨年来高値を更新しているなかで、出遅れ銘柄とされてきた日立の株価上昇が鮮明となっている。
最近、明るい材料に乏しかった日立の株価が上昇しはじめた背景について、準大手証券のアナリストは「日立は業績面では増益基調にあり、ほかの総合電機各社と比べても全く遜色はない。しかし、将来的に大きな成長が見込める分野が見出せないという弱さがあった。ところが、ここにきてようやく新成長の芽となる事業分野で、株式市場の注目を集めはじめている」という。
市場関係者が注目しているその新規事業とは、業界の中でも日立が先行しているICタグだ。ICタグは極小のICチップを組み込んだ電子荷札で、ICチップにアンテナを取り付け、読み取り装置などと無線で情報をやり取りする。専用機器やソフトなど、関連市場の規模は2003年に500億円、2005年には3000億円になると見込まれている。さらに総務省では、ICタグ関連システム全体の市場規模について、2010年には31兆円に達すると予測している。ICタグが普及するためには、従来1個30円程度となっていたチップなどの低コスト化が不可欠となっている。
日立では、伊藤忠商事などと共同で、0.4ミリメートル角の世界最小級の超小型ICタグ「ミューチップ」の開発に成功している。このミューチップは、従来の3分1の1個10円という低価格を実現しているのが大きな特徴だ。すでにこのミューチップは、伊藤忠が商標権を持つスポーツ靴ブランド品などの受注管理システムなどに採用されている。さらに、日立は日本オラクルと共同で、このミューチップを使って1つ1つの荷物の位置を正確に把握できる物流支援システムの開発にも成功している。
ICタグは非接触型のデータキャリア(データを運ぶもの)の一種で、商品・在庫管理、流通管理、食品の生産履歴、さらに万引きや偽造などの犯罪防止に役立つとされ、今後も用途の拡大が期待されている。ICタグは急成長期待の事業分野だけに、競争の激化が予想されるが、日立のこの分野での活躍に期待したい。
日立の足元の業績は、ソフト・サービスや白物家電でのリスクはあるものの、IBMから買収したHDD事業が好調なほか、プラズマテレビや液晶材料、自動車向け高級金属部品なども好調で、これらの事業が不振部門をカバーすることになりそうだ。2004年3月期の連結業績は、売上高8兆3500万円(前期比1.9%増)、経常利益2250億円(同2.3倍)と見込まれている。
同社の株価は、昨年12月11日の安値600円を底に反発に転じ、その後はほぼ一貫して上昇を続けている。1月20日の株価は昨年来高値の743円だ。ほぼ1カ月の短期間に急上昇してきただけに、小幅な調整場面は想定されるものの、中期的には1000円の大台乗せの可能性もありそうだ。
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