富士通のファナック株売却、その思惑と影響

 ファナックの株価が先週の18日に3日続落となり、終値で5960円と7月1日以来の6000円割れとなった。同社の筆頭株主である富士通が17日、保有するファナック株を追加売却すると発表し、11月に実施した売り出しの主幹事である日興シティグループ証券が、追加的にファナック株を買い取る権利を行使する。このため、先行きの株式需給に対する警戒感から売りが先行しているのだ。

 今回売却されるのは220万株。富士通は、2004年3月期の連結最終利益を300億円の黒字(前期は1220億円の赤字)と予想しているが、これはそのまま据え置いた。実は今回の売却は初めてではない。富士通は保有するファナック株を5月に1100万株、11月にも2400万株売却しており、今回の追加分を含めた売却総額は2200億円弱に達している。これにより、売却後の持ち株比率は退職給付信託の保有分(800万株)を含めても18.64%(3347万株)となった。保有しているファナックの株式をたびたび売却していることについて富士通は「有利子負債圧縮策の一環で、課題となっている財務内容の改善が目的」としている。

 ファナックの株価は9月2日に年初来高値8080円をつけて以降、多少の上下動はあったものの、傾向的にはほぼ一貫して下降トレンドを辿っている。2004年3月期の連結純利益が過去最高の490億円(前期比24%増)と見込まれているにもかかわらず、株価が下げ止まらない要因として、度重なる富士通保有のファナック株売却の影響があることは確かなようだ。すでに富士通によるファナックの持ち株は20%を割り込み、持ち分法適用の対象外となったため、ファナックへの投資利益が連結計上できなくなっている。したがって、ファナックに投資しようとする投資家は、今後も折りにふれて売却が実施される可能性を意識させられることになる。これが需給悪化懸念につながり、株価の上値を抑えることにもなりそうだ。

 富士通が借金の返済に迫られて、背に腹は代えられず保有するファナック株を売却するのは理解できないこともない。しかし、業績が好調に推移しているにもかかわらず、売却によって株価が抑えつけられてしまうファナックはどうなのか。

 これについて外国証券のアナリストは「確かに筆頭株主がまとまった株数を売却し続けるというのは愉快なことではない。しかしファナックは、自動車向け産業ロボットの好調や、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話の射出成型機も国内や中国向けなどに順調な売上を示している。こうした業績が好調な時期に、思い切って“親離れ”を図って富士通の呪縛から開放され、独自の路線を模索したいというのが本音ではないのだろうか」としている。

 いずれにしても、子供が成長したことによって膨らんだ資産の一部を切り売りして借金の返済に充てなければならないという親の姿は誉められたものではない。

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