ソフトバンクの株価が先週末の14日に続き、週明けの17日も一時前日比ストップ安(500円)の3500円まで売り込まれた。ソフトバンクの株価が10月17日の年初来高値7370円をつけてから、なぜわずか1カ月で52%もの下落となり、あっさりと半値を割り込んでしまったのか、その背景を探った。
ソフトバンクが10日に発表した2003年9月中間期の連結決算は、売上高が前年同期比18.0%増の2254億5400万円、経常損益が536億4500万円の赤字(前年同期は459億5600万円の赤字)、最終損益が773億3800万円の赤字(同558億200万円の赤字)となった。
ブロードバンド「Yahoo! BB」のユーザー数が、9月末日現在で324万8000人(前年同期比3.2倍)へと拡大したことや、検索サイト「Yahoo! Japan」運営のインターネットカルチャー事業が伸長したことなどで売上高は伸びた。しかし、その一方で、「Yahoo! BB」ユーザー獲得のためのモデム配布や利用料の無料期間設定などの費用が増大しており赤字幅が拡大した。
これに対し孫正義社長は、ブロードバンドインフラ事業の展開について、「顧客獲得費用を入れなければ、第1四半期にすでに黒字転換している。第2四半期では34億円の黒字になった。顧客獲得関連費用を含んだ場合でも、2002年度の第2四半期で営業損失は底を打ち、その後徐々に赤字幅を縮小させている」と強気の姿勢を崩していない。
また、モルガンスタンレー証券のレポートでは「中核のブロードバンド事業の営業損失は引き続き縮小している一方、非ブロードバンド事業の利益は前年同期比で18倍に拡大した。純負債の圧縮が続いていることから、以前懸念されていたバランスシートリスクは後退してきている。上場済み保有株式を現在の時価で計算し直すと、ソフトバンクのフェアバリューは1株当たり4900〜6300円前後と試算され、そのミッドレンジである5700円を目標株価とする」としている。
ところが、こうした判断とは裏腹に株価は下落の一途をたどっている。そこには、企業収益などのファンダメンタルズだけでは推し計れない、市場内部的な株式需給面での要因が支配しているようだ。
ソフトバンクの株価がそれまで続いていた3000〜4000円レンジでのボックス相場から抜け出したのは、9月に入ってからのこと。9月1日の終値3470円から10月17日の7370円まで、わずか1カ月半のあいだに株価は2.1倍に急騰した。
ソフトバンクが買い上げられている間、様々な買い手掛かり材料が取り沙汰されていた。取り沙汰された主な買い支援材料として、まず子会社であるヤフー、SBI(ソフトバンク・インベストメント)の株価の上昇があげられる。ヤフーにはジャスダック市場から東証1部への昇格(TOPIX指数銘柄の新規採用に伴うテクニカル面での組入れ買い需要)、SBIにはベンチャーキャピタルとしてIPOブームの追い風が好材料視された。ほかにも、ソフトバンク自体が10月から日経平均225種銘柄に新規採用されるとの思惑があったことや(実際には9月9日に採用されないことが発表された)、IP電話サービス「BBフォン」の利用者数が300万人を突破するというニュースが伝えられたこと、さらには米国株式市場でのインターネット関連銘柄の株価上昇などが買い支援材料となった。
しかし、実際に株価を押し上げるには、主にほかの要因が作用していたようだ。中堅証券のベテラン投資情報部長は「99年から2000年にかけてのITバブル相場再現の幻想を、ネット証券を利用している個人投資家と証券会社のディーラー(自己売買部門)が中心となって作り上げようとした。こうした動きに、総選挙を目前に控えた政治資金も流入して株価がハネ上がったのではないか」としている。
ところが、実態面の裏付けに乏しいITバブル相場の再現は道半ばで弾け、株価はいわゆる“往って来い”の状態となっている。この急騰、急落相場の後に残ったのは、膨大な信用取引の買い残だ。11月7日申し込み現在のソフトバンクの東証信用買い残高は2573万株(買い残高は451万株)と膨らんでおり、信用倍率は5.7倍。これが、株式需給面での大きな重荷となっている。
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