価格比較サイト「価格.com」を運営するカカクコムが9日、東証マザーズに新規上場した。買いが殺到したことから上場初日は値が付かず、上場2日目の10日午後にようやく公開価格(120万円)比3.5倍の420万円で初値を形成した。初値上昇率はメディネットに次ぐ今年第3位。終値は449万円となった。この超人気ぶりの背景を探った。
カカクコムは、圧倒的ナンバーワンの価格比較サイト「価格.com」上でPCをはじめ、家電、通信料金、自動車保険などさまざまなジャンルの商品・サービスの価格情報を提供している。9月現在、サイトの利用者は月間370万人を超え、1億6000万ページビュー(ウェブにおけるアクセスアカウント単位)を誇っている。
同社の主な業務は、「価格.com」へのショップ情報の有料掲載による集客サポート事業、PCメーカーなど他社サイトにユーザーを誘導し、購買実績に応じてフィーを獲得する販売サポート事業、損保などに対してユーザーからの見積依頼情報を提供する情報提供時業務、「価格.com」のウェブサイトを媒体としたバナーおよびテキスト広告の掲載を中心とする広告販売業務などの4つに大別される。
大手証券の試算によると、同社の2004年3月期の単独業績は売上高12億2000万円(前期比2倍)、営業利益4億4000万円(同20%増)、経常利益4億円(同81%増)、純利益2億3000万円(同81%増)と見込まれている。販売サポート業務、情報提供業務の多くは、前3月期中に立ち上げたもので、今3月期はそれがフル寄与するためだ。今期予想1株利益は2万5275円となり、上場初値420万円で試算したPERは166倍とかなりの割高水準となっていることは確か。それではなぜ、新規公開でここまで初値が高水準までハネ上がっているのか。
外国証券のアナリストは、最近新規公開されたIT関連やバイオ関連の銘柄がいずれも好調な初値形成となっている背景を指摘するが、さらに「上場に際しての公募・売り出し株数が合計でも2000株と少なかったことで、希少価値的な人気も加わった。また、価格情報の提供というビジネスモデルは、単にPCやデジカメ、ブロードバンド料金といった分野にとどまらず、例えばブランド品、日常の生活用品、家具、引越し料金、結婚式・葬儀場の料金など、対象分野が無限に広がる可能性があり、そこに期待感が集まっているようだ」としている。ただリスク要因として、この価格情報の提供という事業は比較的参入障壁が低いことから、将来的には競争の激化が十分予想されることも指摘している。
カカクコムの代表取締役社長、穐田誉輝氏は上場後の記者会見で「日本のパソコンメーカーの公式サイトがどこのサイトを直前に経由してくるかを調べた結果によると、カカクコムはソニー、シャープなどで1位、ほかのメーカーでも悪くても5位には入っている。カカクコムを見てから商品を購入することが定着しつつあり、これはメーカーに対する影響度を表す」と自信をみせている。
親会社、デジタルガレージにも影響が
一方、カカクコムの親会社で3860株(発行株式数の42%)を保有するデジタルガレージは、150億円以上の株式含み益を得たことになる(株価を初値の420万円とし、取得価格の20万円を差し引いた400万円を含み益として試算)。
デジタルガレージ代表取締役でカカクコム会長の林郁氏は記者会見で、新たにデジタルガレージの子会社3社が具体的な上場準備に入っていることを明らかにした。上場の可能性がある子会社としては、イメージクエストインタラクティブ(着うたなど携帯コンテンツ)、アルク(語学教育)、イーコンテクスト(コンビニ決済など)、イーコマース総合研究所(コンサルティング・調査・分析)、デジタル・ネットワーク・アプライアンス(ブロードバンドビデオサービス)あたりが有力視されている。
デジタルガレージの株価は、カカクコムの上場前人気によってここ1カ月余りで7倍もの急騰をみせている。しかし、時価総額は237億7836万円(10日終値)と、子会社のカカクコムと比べても低水準にある。子会社3社の株式上場は、いまのところ来年以降となる見通しだ。一部市場関係者からは「いつか来た道、ITバブル相場の再現には警戒感が必要」との見方はあるものの、カカクコムとその親会社であるデジタルガレージの株価推移からは目が離せそうにもない。
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