楽天は4日、国内最大の宿泊予約サイト「旅の窓口」を運営する日立造船の子会社、マイトリップ・ネットを323億円で買収し、100%子会社化すると発表した。これによって、同社が電子商取引(EC)市場の総合企業としてヤフーに対抗する勢力を目指す方針が一段と鮮明になってきた。本業である仮想商店街と宿泊予約サイトの合流でどれだけの相乗効果を爆発させることができるのか、大きな注目を集めそうだ。
この発表の翌日5日の楽天の株価は、終値で前日比1万7000円高の29万円と急反発をみせ、8月21日につけた年初来高値29万5000円に迫った。出来高も1万1576株と大きく膨らんだ。のれん代の一括償却で今期も最終赤字が続くものの、買収により成長が加速するとの期待感から買いが先行した。
旅の窓口は、7月時点の会員数283万人、月間予約泊数86万泊(7月)を誇り、世界でも有数のトラベルサイト。自前の楽天トラベルは7月の月間予約数が前年同月比3倍と急成しているものの、まだまだ小規模である。今回の買収により、ネット宿泊予約のシェアが70%(推定)となり、グループ全体の取扱高も一気に1.5倍に跳ね上がる見通しだ。
三木谷浩史会長兼社長は今回の買収について「(トラベル分野は)ECの一番の成長分野で、圧倒的ナンバーワンを築ける戦略的意味は大きい」と主張する。マイトリップ・ネットの前3月期の営業利益は10.9億円(前々期比54%増)で、今期以降も利益成長はさらに加速する見込み。なお、旅行関連はECに最も適した分野とされ、2006年には市場規模が2.4兆円(2001年は1200億円)へと飛躍的に拡大するとの試算もある。
楽天の上場後のM&A(企業の合併・買収)はこれで17社目、買収金額323億円はインフォシークの際の3倍超に相当し、これまでの最大規模となった。したがって、今回は手持ち資金(約200億円)で足りない分は銀行借入で賄うことになる。また、上場時の調達資金495億円はこれですべて使い切ることも頭に入れておかなければならない。
外国証券のアナリストは、今回の楽天の電撃的な買収劇と今後の可能性について「まず確実に言えることは、ユーザーにとって“旅の窓口”は日立造船が経営するよりも楽天が買収した方がサービスも飛躍的に向上し、使い勝手も良くなる可能性が高まるということ。つまり、ネットショッピングでのポイントが旅行にも活かせるなど相乗効果が期待できる点だ。さらに、旅の窓口の商品が旅行ということで、ユーザー層が幅広く、これまで楽天との接点が薄かった中高年や女性層をネットショッピングの世界に引き込む可能性も期待できそうだ」としている。
しかし一方では、「株式上場時の時価総額が200億円程度とされていたマイトリップ・ネットに323億円の値を付けた今回の買収はかなりの冒険。今後は金融資本市場から、なんらかの資金調達の手段を早急に検討する必要性に迫られそうだ」(市場関係者)との見方があるのも事実だ。
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