携帯電話向けにコンテンツを提供するサイバードの株価が、8月以降目立った下落をみせている。8月1日に発表された第1四半期(4〜6月)の決算が不振だったことが株安の直接の原因とされているが、株価が反発の兆しをみせない背景にはそのほかにもいくつかの理由がありそうだ。
それまで25万円前後の水準で推移していたサイバードの株価が急落した直接的な原因は、やはり8月1日に発表された第1四半期決算にあったことは確かなようだ。決算発表直後の2日間、株価は連続ストップ安となった。
今3月期連結決算の第1四半期の売上高は、自社提供情報の会員数が6月末段階で350万5000人と前年同期に比べて4%伸びたため、23億9700万円(前年同期比17%増)を確保した。しかし、営業利益8100万円(同66.7%減)、経常利益9400万円(同61%減)、純利益6500万円(同75%減)と大幅な減益を強いられた。これはゲームなどの無料会員の比率が20%と約15ポイント高まったことから、総会員数の増大が利益に結びつかなかったほか、カメラ付き携帯電話の普及が進んだことで、待ち受け画面を有料で受ける会員数が減少したことが大幅減益につながった。さらに、新規事業のスタートに伴う人件費などの負担も響いた。5月31日に発表された前2003年3月期の連結経常利益が前期比3倍の13億1600万円と絶好調だっただけに、今回の大幅減益決算は、かなりのネガティブサプライズとなったようだ。
さらに市場の一部には、この第1四半期決算発表の1カ月前の7月初めから、すでにサイバードの株価下落の兆候があったとの見方もある。外国証券のアナリストは「着メロをはじめとした携帯電話向けコンテンツ開発会社であるドワンゴの新規上場が大きな影響を与えた。同業の携帯電話コンテンツ提供ということで、サイバードを売ってドワンゴを買う乗り換えの動きが続いたようだ」としている。ドワンゴは7月17日に新規上場し、当日の初値が公開価格の2倍に相当する341万円にまで上昇するなど大人気を集め、その後も8月4日に上場来高値の484万円まで買い進まれる堅調な株価推移となった。
なぜ、サイバードからドワンゴへの乗り換えが起きているのか。中堅証券の投資情報部長は「多くの個人投資家は、サイバードの無料会員戦略に対して不信感を抱きはじめている。さらに、カメラ付き携帯電話が主流となるなかで、相変わらず待ち受け画面でお金を取ろうとしていれば、会員数が減少するのも仕方がないのでは。最近では40歳、50歳代のオジサンでさえ着メロを喜んで使っている。着メロを中心にコンテンツを展開するドワンゴの優位は当面続きそうだ」としている。サイバードは、メール広告のまぐクリック、ネット広告のバリューコマースと共同で、携帯電話向け有料情報の内容を紹介するポータルサイトを22日に立ち上げると発表したものの、株価の反応は鈍いもとなっている。
サイバードは、ヤフー、楽天など新興の有力IT関連企業が結集しつつある「六本木ヒルズ」に8月11日に本社を移転した。ただ、その2日後の13日に年初来安値の15万9000円をつけるという荒波のなかでの新天地でのスタートとなった。
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