東証などが今年度から上場企業に四半期ごとの経営情報の情報開示を義務付けたことにより、7月末から第1四半期(4〜6月)の決算発表が相次いでいる。「よりキメの細かい適切な情報開示で投資家のリスクを軽減すること」を目的とした四半期決算の導入だが、企業や投資家もかなりの戸惑いを感じているようだ。その戸惑いは株価にも表れている。
今回から初めて本格化した四半期決算の発表で、株価への影響が最も話題となったのは東芝のケースだ。7月30日の取引時間中の午後2時すぎに、東芝は第1四半期の決算を発表した。海外向けパソコンの低迷や、国内プラントの点検、北米向け火力プラントの売上高減少などが響き、同社の今3月期第1四半期の連結業績は最終損益で368億円の赤字と、前年同期の188億円強の赤字に比べて赤字幅が拡大した。
この決算の内容が株式情報端末を通じて伝えられると、それまで500円台で推移していた株価が突如急落し、その日の株価は一気に457円まで売りたたかれた。さらに、翌日31日も株価は下げ止まる気配をみせず、出来高こそ9438万株と東証1部でダントツの大商いを集めたものの、この日は一時、前日比49円安の411円まで売り込まれた。その後も小幅ながらズルズルと下げ続け、8月7日にはとうとう400円の大台を割り込んでしまった。
外国証券のアナリストは「東芝の場合、確かに第1四半期の赤字幅が拡大したが、いわゆる重電部門などは1年間のうちの後半部分に売上が立つという季節性がある。また、通期の業績見通しについては下方修正せず据え置いたにもかかわらず、これだけ株価が下落するのは、短期間の業績にこだわり過ぎてやや売られすぎといわざるを得ない」としている。
一方、情報を開示する側の上場企業からも不満の声が聞こえてくる。ある大手電子部品メーカーの財務部長は「四半期決算を出すようになると、目先的な業績を確保するために、営業部門なども仕事のやり方がどうしても目先的になり、数字を意識的に作らざるを得なくなる。また、たとえ前年同期に比べて利益が増益でも、期初予想を下回れば株が売られる傾向がある。したがって、当初の予想はかなり堅めな水準を出すことになる」としている。
米国では1990年代から先行して四半期決算を導入してきたが、事前予想を下回る決算を出した場合に株価が大きく売り込まれという状態を回避するため、不適切な会計処理に走る企業も目立っており、これがEnronやWorldComといった大がかりな粉飾決算を生む温床になっているとの見方もある。
いまのところ、決算を発表する側の企業も、それを受け止める投資家も手探り状態が続いている。いずれにしても、目先の業績にこだわるあまり、企業も投資家も近視眼的になることだけは避けなければならない。
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