東証マザーズに上場しているインターネット関連サービス会社、エッジの株価がこの1カ月間でなんと5倍となる急上昇をみせている。約2年もの間ほとんど「寝たきり状態」にあった株価がなぜ急に目覚めたのか、その背景と今後の展開を探ってみよう。
株価が動意づくきっかけとなったのは、なんといっても無償で使える基本ソフト、Linuxを基にしたパソコンOS「Lindows」の日本での独占販売権を得たとエッジ発表したことだ。さらに、このOSを搭載した低価格パソコンも商品化し、サーバが主力だったLinuxの需要をパソコンでも開拓する方針を打ち出したことが極めて好感されている。
新興ソフト会社のLindows.com(米カリフォルニア州)が開発したLindowsは、ソフトの基本設計図を公開し、だれもが自由に改良できるオープンソースのパソコン用OSだ。この日本語版をエッジが開発・製造する。Windows対応のパソコンで作成した文書ファイルなども読めるのが特徴。
エッジはLindows上で使える約百種類のアプリケーションソフトを用意。年間約1万2000円を払えば、これらのソフトをインターネットのサイトからダウンロードして利用できる。エッジは6月下旬に、応用ソフト利用権を含めLindowsを1万8000円前後で発売する。また、パソコン製造のエムシージェイ(本社・埼玉県春日部市)と提携し、今夏中をメドにLindows搭載パソコンを2万9800円程度(モニターと応用ソフト利用権を除く)で売り出すことも計画している。
エッジ株価の歴史と現状
エッジは、ITバブル相場の熱狂がまだ残っていた2000年4月に「オン・ザ・エッヂ」として東証マザーズに上場し、上場時の株価は561万円と驚異的な高値をつけた。その後ITバブルの崩壊につれて株価も下落し続け、2001年7月に1対3株の株式分割を実施した後は株価にほとんど動きが見られず、最近では12〜13万円の水準に低迷していた。準大手証券のインターネット関連担当のアナリストは「こうした経過からすると、乾燥しきった枯草に一気に火がついた状態だ」という。
さらに、株価が急騰前のほぼ2倍に相当する25万円水準にまで上昇していた先月19日、6月30日の株主を対象に1対10株の株式分割を実施すると発表したことが株価のさらなる上昇に拍車を掛けることになった。さらに、従業員持ち株制度を通じて自社株を購入した社員を対象に、ストックオプションを付与する制度を導入したことも刺激材料となった。また、従来に比べて簡単・高速にDVDをダビングできるWindows用ソフトウェア、CloneDVDを7月4日から発売するとの発表も株価上昇の支援材料となっている。
今後の展開について中堅証券投資情報部の新興市場担当者は「株価が1カ月間で5倍の60万円(6月5日の高値)にまで急騰したことを常識的に判断すれば、株価は当然危険水域にあるといえる。しかし一方では、Lindows搭載の3万円パソコンが実際に発売され、それが大きな話題となって一般に報じられるまで、あるいは1対10株の株式分割が実施される6月末までは株価は上昇し続けるという楽観派投資家が存在することも確か」としている。
いずれにしても今回の株価上昇の背景には、現在までのファンダメンタルズでは判断し切れない思惑と、それを期待した資金需給の偏重があることは確かなようだ。4月24日にジャスダック市場に新規上場したコンピュータ入力装置のタブレットで世界シェア首位を占めるワコムの株価が、上場日の初値65万円からほぼ1カ月で226万円にまで急上昇したのだが、この利益を獲得して膨らんだ資金がエッジの投資にも向かっているとのうがった憶測もあるほどだ。
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