インタビュー:梅田望夫
2004/03/12 10:01
この記事は『ダイヤモンドLOOP(ループ)』(2004年7月号)に掲載された「破壊的創造のマネジメント」から「ビジネスマンの人脈をつなぐ米国版出会い系サイトの真価」を抜粋したものです。LOOPは2004年5月号(2004年4月8日発売)をもって休刊いたしました。
リード・ホフマン リンクトイン CEO
Q リンクトインを創設したきっかけを教えてください。
A 僕は1997年にソーシャルネットワーク・サイトであるソーシャルネットを設立しました。そのとき、AさんとBさんをつなぐためにマッチングエンジンを開発したわけですが、デートや趣味の集まり、ルームメートを探すといったソーシャルな目的にはうまく機能したのに、仕事を持つプロフェッショナルのためのネットワーキングとしてはうまく使えなかった。このことが、リンクトインをプロフェッショナルに的を絞ったサイトとして創設するきっかけになりました。
Q なぜ、プロフェッショナルには使えなかったのですか。
A デートの相手やルームメートは、対照的な組合せです。二人の人間のパズルが合いさえすればいい。ところがプロフェッショナルのネットワークは、持てる者と持たざる者との間で成り立つ非対照的なものです。片方が投資する金を持っていたり、雇用ポストを抱えていたりする。だから赤の他人といっしょくたにされ、そのうえ見知らぬ人が次々とコンタクトしてくることを好ましく思わない。
プロフェッショナルも新しい出会いを求めていますが、S/N(信号/ノイズ)率が非常に高い、つまりノイズのなかから本当に役に立つシグナルだけを聞き分けられるような状態でないとだめなのです。
リンクトインは、知人に招待されることによって加入できるネットワークですから、自分がすでに認めた人、信頼する人からしか連絡が来ません。リンクトインの目的は、オンライン・コミュニティやソーシャルサイトのように漠然と知り合いを増やすことではなく、仕事上の特定の目的のために新しいつながりを見出すことなのです。
Q リンクトインがどのように機能するのか、説明してください。
A まず自分の知人をリンクトインに招待します。招待するということは、相手を仕事上重要な存在であると認めたことで、その相手に自分のネットワーク、そしてそのネットワークから広がったさらに向こうのネットワークを4段階まで開示して、これを利用してください、というわけです。相手は、そのネットワークにいる人にコンタクトを取れるわけですが、その場合は直接の知り合いである自分を通して、しかも連絡を取りたい理由が何かを明らかにして承認を得なくてはならない。4段階向こうにいる人ならば、途中の3人が承認しなくてはなりません。
Q 利用者にとって最大の利点は、職を見つけられることですか。
A おそらくそうでしょう。社会学者の調査によると、知人に紹介された人材を雇った場合は、半分がうまくいく。雇われた人間も、知人に紹介された職は満足度が高い。商取引や投資などの相手を探すこともできます。
Q 「弱いつながりこそ強い」という説がありますね。つまり、雇用など重要な機会は家族や友達などの内輪のつながりから来るのではなく、知り合い程度の弱い人のつながりからやってくるという。リンクトインは、この考えに基づいたものですか。
A その発展型でしょう。「弱いつながりこそ強い」はスタンフォード大学のマーク・グラノヴェッター教授が唱える説ですが、この説が成立するのは人材募集等を見つける有力な手段がなく、どんな機会があるのかさえわからない場合です。
インターネットによって状況は変わった。情報はすぐ手に入る。必要なのは、「この人はその仕事にぴったりだ」と信用のある複数の知人が自分を強力に推してくれることなのです。
Q リンクトインは、このソーシャルネットワークの仕組みをいずれグーグルのような技術主導のビジネスにするつもりですか、それともドットコム風のマーケティング的なビジネスにする計画ですか。知人を6段階までつなげることができるかつてのサイト「シックス・ディグリーズ」のパテントも買っていますね。
A シックス・ディグリーズのパテントを買い取ったのは、人と人をつなげていく技術がこの領域では根本的なものと思われたからです。われわれは、そこに派生する技術を組み立てていけばいい。
技術主導かドットコム風かについては、おそらく双方が少しずつ混ざったものとなるでしょう。信頼に足るコネクションは何かを一番よく知っているのは、そのネットワークにいる人びと自身であって、インターネットで探し当てるというものではありません。
たとえば、メールの受信ボックスに不動産ブローカーの名前がたくさんあるからといって彼が重要な知人というわけではない。単に頻繁にやりとりしたにすぎません。ですから、グーグルのようなページランキングの方法で、人間関係をランキングできるわけではなく、Aさんはこの仕事に向いているけれども、Bさんは向いていないといったような判断が必要になる。
人間関係はデリケートなものなので、それを技術に組み込む際にはミニマリスト的なアプローチのほうが合っている。その意味では、ドットコム的でしょう。そうはいっても、強固なマッチングエンジンは構築しなければなりませんから、技術主導のビジネスでもある。
Q コネがたくさんある人ほど、ソーシャルネットワークを必要としないという見方がありますが、これについてはどう思いますか。
A ある程度までならそうでしょう。しかし、自分の会社のために広告担当の責任者を雇いたいといったような状況が出てくると、やはり自分のネットワークを探っていって誰かを見つけなくてはなりません。
地位を築いたプロフェッショナルなら、だいたい200から500のコネクションがあります。大半が50から150、そして駆け出しなら50以下です。何か特定の目的で人探しをする場合、自分から4段階までネットワークが広げられるのですから、かなりの人間がそこに含まれることになる。
Q もう一つ抵抗があるとすると、ネットワークはプライベートであってこそ価値があるという考え方です。それをオープンにはしたくない。
A それはごく自然な心情で、人によってはリンクトインに適応できない場合もあるでしょう。ただ、リンクトインなら、瞬時にして知り合いの知り合いに到達できる。人材を探すだけでなく、専門家から知識を得ることもできる。しかも、紹介を承認するなどの権限は利用者自身にありますから、プライベート性も保つことができる。ネットワークのなかに顕在化することによって、ネットワークは一段とパワーアップし、どんどん使いやすくなるわけです。ネットワークというパラダイム自体が新しくなり、ネットワークをもっと効率的に効果的に利用することができるのです。
Q 平均的ユーザーはどんな人ですか。
A 現在15万人の登録ユーザーが95ヵ国、130業界にまたがっています。まだテクノロジー業界がほとんどですが、スポーツ業界や広告業界関係者もいます。リンクトインはプロフェッショナルとして必要な記入項目しか設けていませんから、性別や年齢はわかりません。しかし、CEOや副社長といった立場の人が多いので、彼らは20代よりは40〜50代だろうと見ています。ユーザーが増えれば、海外でのローカルサイトもつくりたい。
Q 現在のシステムは米国的なビジネスの方法に合ったものに見えますが、地理的にも拡大していくとなると、その土地の文化に合わせるのですか。
A リンクトインは、一生同じ職場にい続ける人はいないという考えに基づいています。だからこそ、プロフェッショナルなネットワークが役に立つ。米国では1年で35%の人が職を変えますからその意味では確かに米国的ですが、日本や欧州でも職は流動的になっているので、今後リンクトインが重要になる。
ただし、紹介の際の慣習については一考を要するでしょう。今は一人ずつ紹介するやりかたですが、これが他の文化でも通用するのか。それはこれから発見していくことになるでしょう。
Q そうしたことを考える社会学者もかかわっているのですか。
A ともかくシステムをつくって、それがどう利用されているかを見てさらに改良を加えるという方法をとっています。このほうが優れた社会学的アプローチかもしれません。
Q 収入モデルはどのように考えていますか。
A 考えられる方法の一つは年間契約制でしょう。それも、コンタクトを取りたい人が払う。たとえば、企業が人材を探すために、契約料金を払ってプレミアムサービスが受けられるようにできるのではないか。人材会社にこれを頼むと何十万ドルもかかるわけですから、それに比べるとずっと安く、信頼できるネットワークから人材が得られる。一方、ネットワークに招待したり加入したり、知り合いからの照会を承認したりするのは無料のままです。
Q 資金力のある企業が進出してきた場合、勝ち目はどこにありますか。
A そんな企業が進出するまでに、たくさんのユーザーベースを確立し、使いやすい機能を加え強固なテクノロジーを確立して、商売を繁盛させておくことです。彼らにとっては、この領域は未証明のリスキーなビジネスです。われわれが成功すれば、対抗する代わりに手を組もうとするでしょう。
Q イグジット戦略は何ですか。
A 独立会社として確立させることです。われわれは合理主義者ですから、いろいろなオプションをオープンにはしておきますが、リンクトインは世界中のホワイトカラーのプロフェッショナルたちに役に立つはずです。
Q グーグルも、オルクトというソーシャルネットワークを立ち上げました。彼らが買収しようとやってくるかもしれません。
A 今のところ、そんな話は聞いていませんね。
リード・ホフマン (Reid Hoffman)
アップルコンピュータ等を経て、オンライン課金サイト、ペイパルの設立にかかわる。多くの新興企業に投資家、取締役として参画する等、シリコンバレーの文字どおり「ハブ」的な人物。スタンフォード大学で認知科学を、オックスフォード大学大学院で哲学を修めた。
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