韓国で旧暦正月の連休が終わったばかりの2月10日、「南大門」として外国人観光客にもお馴染みの「崇礼門」が炎に包まれ、ほぼ全焼した。国宝1号として有名で、韓国国民はもちろん、その痛々しい姿は世界にも発信され衝撃を与えた。犯人はすぐに逮捕されたが、価値あるものを失った喪失感は大きい。
韓国政府は崇礼門を復元する意向を示している。だがそのためには約200億ウォンもの費用が必要になると言われている。
崇礼門は2006年3月から一般の人にも解放されており、石でできた土台部分にあるトンネル型の通路は誰でも通れるようになっていた。開放を決定したのは、当時ソウル市長だった李明博(イ・ミョンバク)氏。いわずと知れた17代大統領だ。開放された崇礼門周辺は人の立ち入りやすい構造に変わったものの、昼は観光客で溢れ、とても犯罪など犯せる余裕はない。しかし夜は無人なので侵入しやすい状態だった。
韓国の一般市民は、今回の事件について遺憾の思いや意見をつづっている。たとえば崇礼門の管理を担当する、韓国政府の文化観光部や文化財庁などのウェブサイトの掲示板には、とくに書き込みが集中している。事件の衝撃が冷めやらない11日、文化観光部の掲示板には表に出ているだけでも400以上の書き込みがあった。文化財庁サイトにいたっては、11日午前にネチズンがあまりにも殺到したため、サーバがダウンし、その内容を見ることもできなかったほどだ。
書き込みの一部を見てみると、「韓国の誇りともいえる崇礼門が、あんなに無残に崩れていくなんて」「戦争中でもない平和なこの時代に、それも同じ国民によって焼かれるなんて」「復元さえすれば、(崇礼門の)600年の歴史もそのまま戻るとでも思っているのか?!」「せめて他の文化財はちゃんと管理して欲しい」など内容は様々だ。
またオンライン討論の場である、ポータルサイト「Daum」の「アゴラ」もにぎわっている。題目だけ見ても「崇礼門焼失に対し、必ず責任を取らなければならない人たち」「復元しないで、現代的に再度作り直そう」「崇礼門が焼けたからといって、国まで崩れるのか」など、討論の余地が十分ありそうなものばかりだ。
さらに「Naver」の写真公開コーナー「フォトギャラリー」内では「崇礼門の美しかったあの日を探しています」として、写真を募集し始めた。こちらにも短期間で多くの写真が寄せられており、コメント欄には感傷的な文章が目立っている。
インターネット上の無数の書き込みの中でも、ことさら注目を集めている書き込みがある。それは2007年2月、22歳の青年によって文化観光部サイトの掲示板に書かれたもので、崇礼門の崩壊を予言していると言われている。
「崇礼門近くでホームレスたちの会話を聞いたのですが、“ぱっと火をつけてしまえ”と言っているのを聞きました。崇礼門には警備がありません。崇礼門の開放は好ましいのですが、あまりに警備が薄いのです。(中略)上記のような崇礼門の警備体制に、少しでも手違いがあれば、誰かが放火することになるでしょう」
確かにこの青年の言うとおり、崇礼門は約1年後に放火されてしまった。ネチズンの悔しさの矛先は、2月下旬から本格的に仕事を開始するイ・ミョンバク政権の引継委員会サイトにも飛び火している。今回の事件は、崇礼門開放時に警備をしっかりしなかった、イ氏にも責任があるとする見方から、同サイトの掲示板に書き込みが殺到しているのだ。そのイ氏は復元のための資金を国民からの募金により行うとの案を提案しており、これを巡ってもネチズンの意見賛否両論だ。
いずれにしても今回の事件が、韓国の人たちにとってどれほど衝撃的なものかを知ることができる。先の青年の発言は予言というより警告に近いものであり、また最近はインターネット上の悪質な書き込み社会問題になっているだけに、書き込み自体に対する見方が厳しくなっている。しかし今回、中には重い意味を持つものもあることを、政府側は身をもって体験した。これからはネチズンから発せられる言葉すべてをけっして無視できなくなるはずだ。
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