韓国と北朝鮮が、Linuxを共同開発することになりそうだ。ここで共同開発されるのが「Hana Linux」(“Hana”はハングルで1つという意味、仮称)だ。
韓国の電子新聞の11月30日付けの記事によると11月末、中国で開催された「多重言語情報処理 国際学術大会(ICMIP 2007)」において、南北両国がHana Linuxの共同開発など、Linux分野で積極的に協力していくことに合意したという。
これが実行されれば、Hana Linuxの開発をはじめ、Linuxサーバに関するコモンクライテリア認証、「オープンオフィス」や優秀なオープンソフトウェアの開発およびハングル化などの開発を共同で実施することとなる。これは韓国の「社団法人 韓国公開SW(ソフトウェア)協会」から提案された。同協会のムン・ヒタク会長は、Hana Linuxの共同開発について「確かにこちらから提案したが、(具体的な合意内容などについては)今、北からの返事を待っている段階」という。情勢の変わりやすい部分だけに完全に確定ではないが、今回の合意により共同開発が実現する可能性は高いと見られる。
ところで北朝鮮のソフトウェア開発力は、いかほどのものなのだろうか。ムン会長は北朝鮮のソフトウェアおよびLinux技術について「ソフトウェア開発技術は南より先を行っている。Linux分野ではそれがさらに明らかだ」と説明している。
実際、北朝鮮自体がLinuxを高く評価しており、優れた技術者も多いようだ。2007年10月23日付の中央日報では、北朝鮮がLinuxを「21世紀のもっとも代表的な標準操作体系(OS)になる」と述べているという。一方でMicrosoftはLinuxの普及を「意識的に妨害している」と批判しているというのだ。それだけに北朝鮮はLinuxには大きな注目を寄せており、開発にも熱心だ。電子新聞によると、今回中国で開催された学会にも、北朝鮮の名門大学である金策工業総合大学などから上位のメンバーが派遣され、Linuxへの意気込みを見せていたという。
北朝鮮のこうした実情を、韓国はよく知っていて、関心も高い。韓国の、北朝鮮のIT産業に対する関心の高さを示している組織が「統一ITフォーラム」だ。これは2000年、工業大学としては名門の浦項工科大学校の学長が発足させたもので、現在は毎月1回ずつ集会を開き、北朝鮮のITに関して動向などを研究している。政治情勢上、北朝鮮の企業は参加できないが、北朝鮮の企業と協力したいとの意思を持った企業が集まってくる。じつは今回の学会も「統一ITフォーラムが北朝鮮との中間に立って開催したものだ」(統一ITフォーラム)という。
そしてちょうど韓国ではソフトウェア技術向上の視点から、政府がLinuxなどオープンソースウェアの活用を進めてもいる。さらに、韓国にとって何より意義深いのは、Hana Linuxを南北共同で開発できる点だ。だからこそHana Linux計画が今後、具体的に進行すれば、大きな注目を浴びることは確実だろう。
もっとも、たとえHana Linuxの具体的な開発内容が決まったとしても、困難は存在する。南北間で使われている言葉(IT用語)の違いなどが、代表的な例だ。南北のハングルはだいぶ異なるものになっており、言葉遣いでどちらの国の人か分かることもある。逆に実現すれば歴史的にも技術的にも大きな成果が期待でき、双方に利益をもたらすものであることから、公開SW協会などがこれにかける期待は膨らんでいる。
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