ITアウトソーシング会社のSK C&Cは7月末、郵便局の運営を行う郵政事業本部のイメージサーバに、同社開発のLinux OS「GINUX」が適用されると明らかにした。この取り組みは郵便業務の情報化や、物流システムの安定化および効率化を目指し、郵政事業本部が進めている「2007年度 郵便業務用端末装備導入および設置」事業の一環として実施される。
GINUXはETRI(韓国電子通信研究院)などが開発した「Booyo」という韓国標準のLinux OSを基盤にし、SK C&Cが自社開発した。データ転送時に発生する不必要な作業を除去して、素早いコピーを可能にするゼロコピー機能を提供し、優れた転送力を発揮するのが特徴だ。SK C&Cは2007年中にGINUXの韓国市場での占有率を、5%に上げることを目標として掲げている。
GINUXにはこれまで目立った導入事例がなく、公共機関へ提供する際のネックとなっていた。そのため2007年5月、導入事例作りのためSK系列の携帯電話事業者SK Telecomの営業支援システム構築の際にGINUXを適用、前例を作って今回の成功につなげた。微々たるレベルではあるが、公共機関を中心に少しずつ地位を確立しようとしている。
ところで韓国市場ではGINUXよりも先発の「Asianux」というLinux OSが多く使われている。これは代表的な韓国語ワープロソフト「アレアハングル」のメーカーであるHaansoftと、日本のミラクルリナックス、中国のRed Flag SoftwareからなるAsianuxコンソーシアムが、アジア標準のLinuxを目指して共同開発したものだ。
韓国においては教育人的資源部、行政自治部など政府、公共機関への導入事例を多く持つほか、インドネシアなど海外政府への導入に向けた動きもある。また最近ではベトナムの科学技術省とAsianuxコンソーシアムとで、ベトナム内におけるLinuxおよびオープンソースソフトウェアの推進で協力することを合意。Asianuxコンソーシアムにベトナム企業が加わって4カ国体制となる予定にもなっており、アジア標準としての地位を着実に固めつつある。
インターネットビジネスにしろ家電製品にしろ、海外企業よりも地元企業が強いことで有名な韓国市場だが、Linux分野でも同様の状況だ。
こうした状況を見つめるRed Hatの視線は厳しい。Red Hat Koreaのキム・クン支社長は「Linuxディストリビューションには多くの製品があるが、実際にはどれも本領を発揮できずにいる。また他社製品がRed Hatを代替できる確率も少ないと見る。現在Booyo、Asianux、GINUXなどを調査しているが、Red Hatの比較対象とはなり得ず、製品的には(Red Hatの方が優れているので)心配していない」と述べた。
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