韓国ではまだ任天堂の「Wii」が販売されていない。しかし韓国の報道によると、2007年中には販売される見通しのようだ。世界的に見れば劣勢のPS3だが、韓国市場においてはどうだろうか。
「Wiiは韓国でもある程度成功をおさめることは可能でしょう。しかし韓国にはPS3がより成功しやすい風土がある」とSCEK担当者は述べる。
1つ目は韓国市場におけるBlu-rayの普及だ。Blu-rayの規格策定には、韓国最大手の電子メーカーであるサムスン電子が参加しており、いくつかBlu-ray専用プレーヤーもリリースしている。韓国での販売力やブランド力がもっとも強いサムスン電子がBlu-ray販売に本腰を入れれば、相当の訴求率を発揮することが予想される。
一方東芝などが支持するHD DVD。現在東芝は韓国においてPC事業のみを行っている。家電事業の地盤もない韓国では、そうした点がHD DVD販売に不利な条件になるのではないかと、SCEK担当者は話す。
2つ目は韓国ユーザーが、色々な機能を併せ持つ「コンバージェンス」製品を好む点。加えて新機能も柔軟に受け入れる傾向が強い。そのため多機能なPS3が、Wiiよりも優勢ではないかと見ている。
ゲーム、Blu-ray、インターネットのほか、後述するVODサービスにまで対応することになれば、PS3ですべてが完結しお得感がより高いというのである。また「大人たちのゲームに対するイメージがいまだ良い方とはいえない韓国において、ゲームがメインのWiiを小・中学生に買い与える親がどれほどいるのか」(SCEK担当者)と予測もする。
しかしこうした環境的な要因だけでは不確実だ。SCEKでは今後、韓国好きするゲームタイトルの販売や、Sony Picturesとの提携によるBlu-rayタイトルの販売とプロモーション、VODサービスの提供など、マニアから一般ユーザーまでを取り込めるマーケティングを展開していく予定である。SCEKのマーケティング活動に、予測どおり市場環境が追い風となるのかが勝負の分け目となりそうだ。
PS3は後にIPTVにも対応する予定だ。具体的にはPS3がIPTVを受信するためのセットトップボックスのようになるもので、これにより高画質VOD閲覧などが楽しめるようになる。
IPTVに関する技術はSCEKが開発したもので、現在KTやHanaro TelecomといったIPTVコンテンツを持つ通信事業者と、サービスに向けての話し合いを行っている。
提供されるコンテンツはKTやHanaro Telecomのものとなる予定だ。たとえばHanaro Telecomの「hanaTV」を見てみると、映画やドラマからニュース、スポーツ、アニメなどあらゆる番組が用意されている。これらのコンテンツを提供するようになるとPS3は、マルチメディアデバイスと位置づけられるほど豊富なコンテンツを持つことになりそうだ。
実際のサービス時期は「本社との話し合いもあるため」(SCEK担当者)まだはっきりとはしていないが、「そう遠くはない」(SCEK担当者)と明言できるほどサービスへの準備は整えられているようだ。
IPTVにまで対応することで今後大きな進化が予想されるPS3だが、肝心のゲームに関しては「まだPS3を象徴するほどのタイトルは出ていない」(SCEK担当者)というのが課題。ゲームはもっとも分かりやすく訴求度の高い機能だけに急務ではないかと思われる。
またコンバージェンス製品であるゆえに、ゲームだけでなくBlu-rayやIPTVなど多様な機能が市場での認知度が広がり、受け入れられる必要もある。そうでなければ一般のユーザーが50万ウォン以上を出してまでPS3を買おうとは思わないだろう。
これにはSCEKだけの努力ではどうにもならない部分があるものの、いずれにしても今後展開していくマスマーケティングが重要になると考えられる。その前に現在進行しているマニア向けのピンポイントマーケティングだ。ここでどれだけしっかり基盤を作れたかが今後につながる。
「韓国のPS3は今やっと本格的なビジネスを始める土台が揃ったところ。本当の競争はこれからです」(SCEK担当者)
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