韓国のVoIP業界では今、番号ポータビリティが大きな議論を呼んでいる。これから導入しようと計画している番号ポータビリティの方法論に対して、意見が分かれているためだ。
現在、韓国のVoIP市場ではKT、Hanaro Telecomなど、自社の通信回線設備を保有している基幹通信事業者と、Samsung Networks、SK TellinkなどVoIP専用事業者などが競争している。いずれも、固定電話と同じような専用電話機を設置して利用するVoIPサービスを提供する。韓国では、VoIP用の電話番号には「070-××××-××××」というように、070で始まる固有の識別番号を付与することが決められている。
070番号から電話をかけた場合の料金は市内外に関係なく39ウォン/3分となっている(こちらは、Samsung Networksの料金だが、たいてい、どのサービスを利用しても似たりよったりの料金設定になっている)。これは39ウォン/3分の固定電話による市内通話と同等であるものの、14.5ウォン/10秒の市外通話(31km以上の市外通話)と比べるとかなり安い料金だ(固定料金は、割引時間帯以外のKTの通常料金で計算)。
しかし現在のところ、VoIP利用はあまり活発な方とはいえない。理由はさまざま考えられるが、一般の人たちからの知名度や理解度がまだまだ低いことや、広告やスパム電話が多いことで有名な有料電話情報サービスの識別番号「060」「080」に、VoIPの識別番号がよく似ている、といったことなどが考えられる。
そうしたVoIP市場を活性化させようと、韓国政府の情報通信部や情報通信政策研究所などは、VoIPの番号ポータビリティを実施しようと準備を進めている状態だ。
これは現在固定電話に加入している人がVoIPに変えた際、それまで使っていた番号を継続して利用できるようにするという制度だ。この際、電話料金は識別番号を基準に課金されることとなる。
たとえばソウル在住の固定電話加入者は普通「02」で始まる番号を持っている。番号ポータビリティが実施された場合、この人がVoIPに変えても「070」番号に変更する必要はなく、同じ番号が維持されるというわけだ。
しかし問題は課金面だ。ソウルで番号ポータビリティを行った人が識別番号「051」の釜山に引越ししたとしよう。この人は釜山にいながらにしても、引き続き(ソウルの地域番号である)「02」番号を利用することとなる。
識別番号を基準とする上記の課金方法に従った場合に、情報通信部と情報通信政策研究院で問題視されているのは、釜山在住者の070番号に釜山市内の友達が電話した場合、その友達には市外電話料金が適用され、逆にソウル市内にいる家族がこの人に電話をかければ、その家族には市内料金が適用されるという事態が生じるということである。また異なる識別番号が、同じ市内に混在することともなる。
これに対し基幹通信事業者側は「番号変更の手間はあるものの、こうした矛盾を生じさせないためにも、そして利用者が混乱しないためにも、地域別の識別番号の適用は行うべき」と主張している。
逆にVoIP事業者は「識別番号による課金問題については、音声案内を義務化するなどして利用者へ知らせれば、混乱はそれほど大きくならないだろう。利用者が他の地域に移っても現行の番号を使えるよう、番号ポータビリティやVoIP本来の移動性を保障しよう」という立場をとっている。両者一歩も譲る気配はない。
ちなみにVoIP(070)から固定電話へ番号移動する場合に関しては、課金をどう行うかという問題があるため、こちらについては中長期的な導入が検討されている。つまりVoIPの番号ポータビリティにおける最大の問題は、現時点で固定電話における課金の基準が識別番号となっていることにあり、この基準を変えない限り、スムーズな番号ポータビリティの実施は難しいかもしれない。
固定電話とVoIP間の番号ポータビリティは、今後VoIPが大きく普及すると仮定すれば大変便利な制度ではあるが、議論すべき問題が多く実施段階にはまだまだ遠い。番号ポータビリティの実施が予定されている2008年までには、なんとか解決の糸口をつかみたいところだ。
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