韓国のポータルサイトでは、紹介されるニュース記事1つ1つにコメントをつけられるようになっている。そこでは多くのネチズン同士が意見交換できる一方で、他人の名誉を傷つけるような悪質な書き込みも少なくなく社会問題となっている。そんな悪質な書き込みの責任を、ポータルサイトに問う判決が出て注目を浴びている。
ソウル中央地方裁判所は、ポータルサイトに掲載された記事により原告が名誉を毀損されたとして、ポータルサイトを運営する4社に対し損害賠償支払命令を言い渡した。
今回の裁判の原告であるA氏は、別れた恋人B氏の自殺に関して名誉を毀損されたと訴えていた。B氏はA氏から別れを告げられたことを苦に自殺したが、その後B氏の母親がB氏のSNSサイトに、A氏を非難する書き込みを行った。これがネチズンの間でいっせいに広まり、SNSサイトやポータルサイト内の掲示板などでA氏に対する批判的書き込みが急激に増えたほか、A氏の名前や連絡先など個人情報までが露出した。
事件性のあるこの話題をメディアが放っておくはずはない。一連の内容がメディアで取り上げられると、A氏へのインターネット上での批判(誹謗)はいっそう強まった。
結局、法廷ではNHN、Daum Communication、SK Communications、Yahoo! KOREA の4社に対し、計1600万ウォンの損害賠償支払命令が下された。裁判所は「ポータルサイトはA氏にとって不利な評価(記事)が公開されればA氏の名誉が毀損されることを分かっていながらも、ネチズンの書き込みによって批判できるようこれを放置した」という理由で、ポータルサイトの責任を厳しく追及した。
これに対しポータルサイトは「単に記事を伝達しただけであり、責任はない」という立場をとったが、ソウル中央地方裁判所では「ポータルサイトは記事の題目を変えたり、コメントを書き込みできるスペースも提供する。メディアから提供される記事を公開すれば、その影響力はメディアよりも大きくなる可能性もある」として、この主張を退けた。
悪質な書き込みから発生する事件というのは韓国でも日常茶飯事ではあるが、今回の事件にとくに大きな注目が集まるのは、ポータルサイトのメディア性に関する議論が含まれているからである。
韓国では「ポータルサイトはメディアなのか?」という命題については、以前から活発な議論がが行われている。それは各メディアサイトよりも多くのアクセス数を誇るポータルサイトが掲載する記事の影響力や、記事掲載に対する方針についての議論でもある。
韓国インターネット記者協会によると「ポータルサイトは毎日8000件以上生産される全記事のうち、自分たちの基準に合う200件程度の記事を選別し、サイトの主要面に配置する。クリック数が高い記事は題目まで変えて掲示することもある」という。原則的にポータルサイトは取材や記事執筆などは行わないが、こうした行為を行えばポータルサイトもメディアではないか、という議論が起こるのは当然だろう。
今のところ法的には、ポータルサイトはメディアではない。韓国の新聞法におけるメディアの定義が、ポータルサイトの活動内容と合致しないからだ。またポータルサイトがメディアか否かということ自体に関しても、まだまだ議論は決着をみていない。しかし今回の判決により、ポータルサイトにメディアとしての責任を追及する動きは、今後強まっていきそうだ。
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