10月3日に行われる、オンラインゲーム大会「第1回 スーパーファイト」が、ポータルサイトの「Naver」内でオンライン生中継およびビデオ・オンデマンド提供される。この日の目玉はイム・ヨファン選手対ホン・ジンホ選手、そしてイム・ヨファン選手対マ・ジェユン選手という、トップクラスの「プロゲーマー」同士の対戦だ。
Naverがとくにこの試合を生中継するのは、この日を境にイム・ヨファン選手の試合を約2年間、見られなくなる可能性が高いからだ。韓国の男性ならば誰でも義務付けられている軍隊に、26歳のイム・ヨファン選手もついに入隊することとなったのだ。
ところでイム・ヨファン選手とは、一体どんな人物なのだろうか。紹介する前に韓国のオンラインゲーム事情について軽く触れておこう。韓国ではプロのゲーマーが職業として成り立っている。韓国政府の文化観光部が実施している「プロゲーマー登録制度」によって登録された人が公式のプロゲーマーとして活動できる。
各自、家電メーカーや通信事業者など企業が主宰するプロゲーム団に所属しており、1年を通して行われるプロリーグ戦やゲームイベントで腕を競い合う。プロのスポーツ選手と同じと考えれば理解しやすいが、韓国ではこのようにゲームの試合をはじめ、それを取り巻く放送やコミュニティ活動なども含め「eスポーツ」と呼んでいる。
韓国でオンラインゲームの人気が高いというのは有名な話で、この国ではeスポーツへの関心も高い。ケーブルテレビではプロゲーマーの試合中継などを1日中行っているゲームチャンネルが3つもあるほか、有名選手には固定ファンもつく。総プロゲーマー数131人、1年を通した大会賞金の総規模30億ウォンだった2001年に比べ、2004年の総プロゲーマー数は219人、大会賞金総規模45億ウォン(韓国eスポーツ協会調べ)と市場は拡大の一方で、ゲーム熱は冷めることを知らない。
イム・ヨファン選手は、リアルタイム・ストラテジーゲーム「StarCraft」でいちやく有名になった、「SK Telecom T1」ゲーム団所属の選手だ。同ゲームは「Terran」「Zerg」「Protoss」の3種族が戦う構成となっているのだが、Terranとして戦うイム選手のそのずば抜けた技術力と才能は人々を驚かせ、「Terranの皇帝」というニックネームとともに瞬く間にオンラインゲーム界のスターとなった。
全盛期は2001〜2002年だったといえる。この年オンラインゲームの「FIFA ワールドカップ」ともいえる「World Cyber Games」にStarCraftの韓国代表として出場し2年連続優勝すると、名声は世界へ広がった。現在の年俸は約2億ウォン、オンライン上のファンクラブには約60万人近くの会員がいるといわれる。
そうして韓国ゲーム界を盛り上げてきたイム選手の空軍入隊は、韓国でも大きく報じられ人々を驚かせた。義務とはいえ入隊を惜しむファンもいるほか、スターが不在となることで今後のゲーム界を憂慮する声も尽きず、「ポストイム・ヨファンは誰か」との推測も飛び交う。
確かに韓国にeスポーツを根付かせた功労者の1人であるイム選手が、長らく不在となるのは痛い話ではあるが、逆にこれによる後継者の育成推進や新たなスター発掘という肯定的な面も見逃せない。
今後、10月にはイタリアでWorld Cyber Gamesの決勝戦が行われ、ここに韓国選手団も参加する。さらに韓国内では11月に韓国最大のゲーム展示会である「G★(Star)」が開催され、ここでのイベントとしてオンラインおよびモバイルゲームの対戦も行われる予定だ。
イベントや試合を経るごとに、次なる「皇帝」は台頭してくるものであり、そうした意味でも韓国ゲーム界は新たな一歩を踏み出したといえる。
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