夏休みの海外旅行シーズン。昨今のビジネスの国際化ともあいまって、韓国では海外ローミングサービスの利用者が大きく増えている。
2006年上半期、3キャリア(携帯電話事業者)を通じて海外ローミングを利用した人は、SK Telecom(以下、SKT)が137万8000人、KTFは17万人、LG Telecom(以下、LGT)は5万7900人で、合計約160万6000人となり、中小規模の別定通信事業者(自社のネットワークを持っておらず、回線を借りる形でサービスを行う事業者)の利用者までを含めると、合計約175万人に達すると推測される。
各社のサービス内容を比較してみよう。海外ローミング市場をリードしているのは当然ながらSKTであり、海外ローミングがそのまま可能な端末、つまり同社が韓国内で800MHz帯の周波数を割り当てられているため、端末を別途貸し出しせずとも、自身の携帯電話で直接ローミングできる「自動ローミング」が可能だ。このような便利さともに、韓国最大の加入者数を基盤に独歩的な地位を占めている。
自動ローミングが可能な地域は世界18カ国。電話をかけてきた相手の番号も無料で表示してくれる。さらに海外で災害が発生した際、SMSメッセージで災害状況を逐一教えてくれるほか、言葉の通じない国では緊急通訳サービスを提供するなど、安全性を最優先した内容となっている。
KTFはここのところ、急速な成長を見せている。去る2005年には2004年に比べ100%以上の成長率を見せて20万人の利用者を記録した同社は、2006年上半期だけで既に17万人の利用者を確保した。またW-CDMAの活性化で2006年末もしくは2007年からは自動ローミングが可能となり、今後の大きな成長率に期待できる。
1.8GHz帯を利用しているKTFではSKTのような自動ローミングは基本的に不可能で、携帯電話を借りるしかない。しかしGSM/CDMA両方をカバーし、世界83カ国でのローミングが可能となる「LG-KW9200」(LG電子)を開発・販売するなど、SKTに比べ不利でも努力を惜しんでいない。こうした点が好転の要因ともいえる。
ちなみに日本ではNTTドコモが8月末から開始すると宣言している3.5GのHSDPAサービスだが、韓国では既にSK Telecom(以下、SKT)が5月中旬から「T 3G+」を、KTFが6月末から「ワールドフォン ビュー」を開始している。
じつは両社はW-CDMAサービスも行っているが、これは韓国で人気がふるわず、W-CDMAサービスがあることすら知らない人が多いほどだ。そのため両社のHSDPAにかける意気込みはことさらで「海外からでもテレビ電話が可能となる」というふれこみでユーザー開拓に熱心だ。W-CDMA開始当時の宣伝文句と大変似ており、サービス内容の差別感のなさが気がかりではあるが、自動ローミングが可能となる国際ローミング分野は、大きく飛躍するものと思われる。
SKT、KTFと明暗を分けたのがLGTだ。じつはLGTは、HSDPAどころかW-CDMAサービスすらいまだに行っていない。というのは、同社は政府から2GHz帯のIMT2000(CDMA2000 1xEV-DV)事業の許可をしてもらっていたのにも関わらず、2006年7月に事業可能性の不透明さから、これを突然放棄すると宣言。現行で同社が利用している1.8GHzでそのまま利用できるIMT2000 1xEV-DO Rev.A(DMA2000 1xEV-DO Revision A)を新たにサービスする方向で動いているのだ。
市場占有率16.5%(2006年6月現在。情報通信部調べ)という利用者の少なさもあるかもしれないが、海外ローミングにいたってはLGTの場合、多少不利な立場に立たされた。2005年の売り上げが約84億ウォンで、SKTの売り上げの10分の1の水準となったLGTは、上半期の利用者数も5万7900人にとどまっている。また最近2GHz周波数を放棄し、既存の1.8GHzを選択したことにより、W-CDMA効果にも期待できない。
LGTの海外ローミングは端末を借りるしかない。端末貸出料はなく2000ウォン/1日の基本料がかかるが、インターネットで予約をすれば基本料が50%引きとなる。1分あたりの通話料金もLGTが3社中でもっとも安い。
恵まれた環境を持ち、高価だが細やかなサービスを繰り出すSKT、努力によりSKTとの環境の差を克服しようとするKTF、環境の差を価格攻勢で埋めがちなLGTという構図は、ローミングに限らない全体的な3社の関係を表しているようだ。
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