じつは韓国には、携帯電話のいわゆる「勝手サイト」というものがない。携帯電話ユーザーは、特定のコンテンツプロバイダや携帯電話事業者(キャリア)が用意したサイトのみ利用覧可能となっている。
韓国の携帯電話には日本と同様、インターネットへのアクセスボタンがあり、それを押すだけでキャリアが用意した各サービスの入口となるトップ画面に接続される。このトップ画面には各コンテンツプロバイダサイトへのリンクはあまりない。
では各コンテンツプロバイダサイトを見るにはどうするのかといえば「WINC(いわゆるモバイル住所。Wireless Internet. Number for Contentsの略)」を利用する方法が挙げられる。これは特定のサイトに対応した数字を入力してから携帯電話のインターネットアクセスボタンを押すだけで、簡単にサイトを表示できる機能だ。
しかしWINCの数値を、ユーザーがいちいち覚えているのかといえばそうではなく、実際の利用率はそれほど高くないのが現状だ。となるとやはり手っ取り早いキャリアのコンテンツで済ませるのが常となる。
このようにキャリアに有利なインターネット接続構造に対してはコンテンツプロバイダから不満の声があがり続けていたが、これに対し韓国政府の情報通信部は「ネットワーク開放」政策を推進。これによりユーザーが好みのサイトをトップ画面に表示できる機能などが、将来的には可能となる。モバイルインターネット構造が少しずつ開放されてきているのだ。
しかしここに最近、WiBroを代表する新しい通信規格が登場し、モバイル端末で接続するインターネット構造は急激に変わる方向にある。
WiBroはMobile WiMAX規格として国際標準にもなっている、韓国で開発された高速無線ネットワーク規格だ。もちろん携帯電話のインターネットのようなサイト規制はなく、自由に好きなサイトを閲覧できる。しかも時速60km以上の移動中にでも、下り20Mbpsの転送速度を保証しており、閉鎖的な携帯電話のインターネットだけではいまひとつだったモバイルインターネット市場を大きく拡大するものとして注目されている。
既に6月30日からSK TelecomとKTが同時に商用サービスを開始しており、現在プロモーション料金制として、前者は3万ウォン/月、後者は1万6000ウォン/月で使い放題の安い料金プランを用意し加入者の誘致に必死だ。
一方コンテンツプロバイダではこのWiBroの登場により、現在の携帯電話以上に解放的なインターネット接続環境をさらに推し進められると見て、モバイル端末におけるポータルサイトの座を獲得すべく、激しい競争が開始されている。
Naverはモバイルサイトを改編。通常のNaverのUIをモバイル端末でもそのまま使えるようにすることで、初期画面で最新ニュースなどはもちろん知識検索、ブログ、メール、証券などの主要サービスを利用できるようにした。
Naverは携帯電話でインターネットに接続した後、WINCの369を入力して接続するWAP方式の「Naverモバイル検索サービス」と、携帯電話の待ち受け画面をNaverに設定すると、ポップアップキー1つでサービス利用ができる「ポップアップネイバー」(キャリアがKTFの場合は一部機種に限る)を提供している。また KTとWiBroの試験サービス当時から提携し、モバイル環境下での検索機能の強化に力を注いでいる。
Daumはポータルの中でも先んじて1999年から、メールや同好会サービスの「カフェ」などを携帯電話およびPDAを通じて提供してきた。WINCの3355に対応しているDaumは2005年11月、ユーザーの質問にユーザーが答える「新知識サービス」の回答を、SMSを通じて確認可能としたのに次ぎ、2006年の2月にはSK Telecomと提携して、キーワード検索やイメージ検索などを一度に提供する「統合検索サービス」も始めた。
とくにKTとは戦略的提携をし、2006年3月から5月までは WiBroの試験サービスを推進して、同社の独自サービスの商用化を控えている。最近では WiBro の試験サービス顧客から体験談を募集し、FIFA ワールドカップ期間前に「個人別知能化サービス(PIS)」プラットフォームが搭載された「ワールドカップパック」などを提供した。PISは個人の好みに合わせたコンテンツを再構成して提供するためのプラットフォームで、このサービスではワールドカップニュースや名場面動画集などが提供された。
WINCの9090を持つYahoo! KoreaもKTのWiBroサービスとの事業提携を結び、地域検索サービスで現在いる地域の飲食店から病院まで様々な情報を提供してくれる「Yahoo! そこ」を提供中だ。今後この検索サービスを基盤としメディア、動画サービスへ拡張するなど、 WiBro 市場活性化に努める計画だ。
現在、デスクトップPCでのインターネット環境においては、NaverやDaumが圧倒的なアクセス数を誇っているが、デスクトップとは異なるモバイル環境となるとこうした順位も振り出しに戻る。だからこそポータルサイトはモバイルにおけるポータルサイトとしての地位を、どこよりも早く固めるべく必死の攻勢に出ている。
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