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世の中に、まったく同じマネジメントのやり方、同じスキル、そして同じ弱点を持つITマネジャーはいない。勤め先の規模も違えば、業界も異なり、経験のレベルも人それぞれだ。
しかし、どのITマネジャーに1つだけ共通点がある。それは、職場で出くわすイライラの素が並んだリストを、頭の中に持っていることだ。中身は人によって千差万別だが、ただし誰もがそんなリストを持っている。このコラムでは、私自身のイライラの素を紹介し、各々の事柄にイライラさせられる理由を説明する。
トップ10
お読みいただければ分かるように、各項目は順不同で並べてある。深刻な問題と、そうでもない(だが十分に苛立ちを募らせるような)ものとを、共に含めるよう心がけたつもりだ。では、さっそく順番にみていこう。
1. 30ページもあるプレゼンテーション資料をランチミーティングに持ち込む
明かりが消えた会議室で、延々と続くパワーポイント資料の説明を聞きながら、じっと座っていることだけでも、十分に苦痛である。だが、それより更に辛いことがある。何だかわかるだろうか。それは、昼食時のレストランで、同じように退屈なプレゼン資料を配る人間を見てしまうこと、そして他の客のお喋りに気を取られないようにしながら全員に重要なポイントを判らせようとすることだ。場をわきまえるというのは重要だ。どんなプレゼンをする時でも、自分が話をする相手と、またその場の環境とを理解しておこう。
2. すべての電子メールに意味のない返信を返す
私たちの誰もが山ほどの電子メールを受信する。だから、特に付け加えるべきこともないような返事なのに、「全員に返信」のボタンを押して、わざわざ事を厄介にする必要もなかろう。メールのやりとりに参加している全員が、全部のメッセージに返事を出さなくてはいけないという法律はない。だが、残念ながら、そんな法律が実在すると信じているらしき人間もいる。そして、そんな連中のせいで、私たちの受信箱には刻一刻とメールが増えていってしまうのだ。
3. 問題に対して泣き言を言うばかりで、解決案を出さない
問題を特定できることは重要である。しかし、解決案を提案してこそ本当に付加価値を提供できるというものだ。問題の難しさを声高にいうばかりではしかたがない。
4. 会議に必要以上の人を招集する
会議に出席していて腹が立つのは、議題にあがっている懸案の中心となるべき人が招かれてないことに気づいたときである。しかし、もっとひどいことは、自分が必要でなかった会議に出席させられることだ。幸いなことに、そういう状況での対処法が数多くある。まず1つめは、会議召集を断ること。2つめは、自分がその会議に必要でないと悟った瞬間に、その場を去ること。そして3つめは、他の必要とされていない人を誘って、いっしょに出ていってしまうことだ。ほとんどの人は忙しいから、居てもしかたのない会議から抜け出すお誘いなら、よろこんで話に乗るだろう。
5. 電話会議の際に、離れた場所にいる相手に資料を与えない
各地のオフィスから電話会議に参加するメンバーに、事前に資料を渡して置かなければ、どうにも会議の進めようがない。なので、自分が電話会議の主催者の場合は、予め全員に電子メールで資料を送っておこう。
この問題に関して、私は、加害者と被害者の両方を経験している。 我々の親会社は国を半分横断するくらい離れた場所にあるので、こちらは資料を渡されず、チンプンカンプンという立場になることがある。いっぽうで、別の都市に居住する社員も多くいるため、こちらが会議の主催者になり、そして資料を配り忘れる、といったこともある。 そして、できれば自分の忠告をいつも忘れていないといいたいところだが、実際には遠隔地からの参加者に事前に資料をメールし忘れたことがあった。さらにひどいことに、そもそも自分で会議を招集していたのを忘れてしまっていたことも1度か2度ある。
6. メモを取らず、後でやり忘れる
チームのメンバーを昼食に連れて行ったとき、店のウェイターもしくはウェイトレスが、自分を印象付けようと、全員の注文を書き留めもせずに暗記してしまう姿をみると、私はいつもうんざりする。紙という偉大な技術的進歩がなぜ起きたのか?古代バビロニアかアッシリアのオリーブガーデンでも、ウェイターは針と湿った粘土板を使って客の注文を書き留めようとしただろう。ならばなぜ技術を利用し、注文を書き留めないのか。同じように、打ち合わせや電話会議の際にも、自分の約束したことを書き留め忘れてしまう人がいる。そして結局その約束を忘れてしまうのだ。(もちろん、私のように一応ノートに書き留めておきながら、オフィスに戻ってすぐにOutlookのタスク欄に入力しておかなかったばかりに、後でどこに書いたのかを忘れてしまう人もいるだろうが・・・)。
7. 必要以上に怒る
私たち誰もが、時には怒ることもある。もし怒りという感情が育たなかったら、人間はいまのようにはなっていなかったといえるかもしれない。だが、技術部門の管理者としては、自らの怒りを制御し、他のマネジメントツールと同じように利用する必要がある。時には怒りをみせたり、あるいは自分が怒っていると知らせるヒントが、以下二つの理由から、何かの役に立つこともある。まず、相手が超えてはいけない一線を越えようとしていることを伝える。そして、議論の俎上に上がっている話題について、自分が入れ込んでいることを相手に伝えられるからだ。
だが、怒りをうまく役に立てるためには、まずコントロールする必要があり、自分の思いのままに表に出せなくてはならない。金切り声や叫び声は禁物。芝居がかった素振りも無用。「お前なんかと居るのは嫌だ」と相手にわからせることが許される場合も有る。だが、それもごく稀にであり、また感情をちらりと見せるだけだから許されること。打ち合わせの場や議論の最中に、あからさまに感情を表に出すのは、ほぼすべての場合賢明なことではない。
8. 悪いニュースを後回しにする
悪いニュースはワインではない。放っておけば味が良くなるといったことはない。できるだけ早いうちに、悪いニュースと向き合って、まだ対処する時間のあるうちになんとかしよう。遅くなればなるほど、事態は悪化するいっぽうだ。
9.プライドが邪魔して素直に質問できない
前にも書いたことがあるが、これはいまだに大きな問題だ。自分が知らないことがあるのを認めたがらない管理職が、あまりに多すぎる。部下の前で無知をさらけ出そうとしなければ、折角の質問の機会を逃してしまい、ひいてはそれが不十分な情報に基づいた意思決定につながってしまう。もちろん部下は愚かではないし、だから上司の知識が限られたものであることもよく理解している。無知な人間の下で働きたくはないと誰もが思うけれど、そのいっぽうでITプロフェッショナルのほとんどが、次々に目の前に現れてくるすべてのプロジェクトに関して、その技術的な詳細を熟知しておくよう上司に望むのも、土台無理なことであると承知している。「どうしてこうなるのか分からないよ。いくつか質問してもいいかい?」と素直に言ってくれたら、ITプロフェッショナルの多くは管理職を尊敬することだろう。
10. 会議を定刻に始めない
これも以前書いたことだが、予定の時間より遅れてミーティングを始める時、特に自分でいろんな人に声をかけ、それで集まってくれた人が部屋いっぱいになって開会を待っている時には、集まってくれた人の時間よりも、自分がやっていたことの方が重要だというメッセージを送っていることになる。
もちろん、どうしても遅れてしまう場合もあるだろう。しかし、いつも決まって会議の始まりが遅れることは単純に失礼である。「イライラの素」の1つと自分で感じていることだから、ミーティングに遅れまいとして一生懸命努力している。特に自分が開くミーティングの場合には。だが、それでも遅くなってしまうこともある。
先週自分で人を集めたあるミーティングに10分ほど遅れたことがあった。会議室に着いたときには、すでに会議は議論の真っ只中だった。彼らは悪びれもせずに「先に始めてましたよ」と言い放った。そして、彼らはこう付け加えた。「僕らの時間も大事なんです。時間を無駄にして、あなたを待つつもりはありませんでした」。さらに、もう1つ。「あなたはボスかもしれないけど、この会議に絶対に必要なわけじゃありませんから」と。これは小さな出来事に過ぎないかもしれないが、彼らが私を待たずに会議を始めていた、この事実は気に入った。
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