ドイツでNokiaのボイコット運動が起こっている。労働組合や政治家が、「Nokiaの携帯電話を耳に当てるたびに怒りを感じたくない」として、他社製へ買い替えようとしているのだ。だが、“Made in Germany”の携帯電話を探すのであれば、チョイスはもうほとんどないのが現状だ。
ボイコット運動は、Nokiaが1月15日に発表した自社ドイツ工場閉鎖のニュースを受けてのもの。Nokiaはここで、ドイツ西部にあるボーフム市にある工場を閉鎖しルーマニアに製造拠点を移転させると発表、ドイツにおける携帯電話の製造を完全に打ち切る予定だ。Nokiaは同市で、雇用者数にして2番目の企業。今回の拠点閉鎖により、約2300人の解雇を予定しているという。
この発表がされるや、政治家らがNokiaのボイコットを呼びかけた。ある省のトップは、自分の省でNokia携帯電話を禁止する可能性も示唆したという。発表の翌週には、約1万5000人がボーフム市をデモ行進し、工場閉鎖反対を呼びかけた。
Nokiaがボーフムの工場を閉鎖する最大の原因は、人件費を含む労働コストだ。次の移転先となるルーマニアの人件費は、ドイツの10分の1以下。英Financial Timesが引用している欧州連合(EU)の数値によると、ドイツの賃金は最高で時給32ユーロであるのに対し、ルーマニアは2.45ユーロという。携帯電話は価格競争が進んでおり、「長期的な視野に立つと継続可能ではない」とNokiaは説明している。
実はボーフム市は3年前にも危機を経験している。自動車大手のOpel(GM傘下)が、やはり工場の閉鎖計画を発表したときだ。このときは結局、激しい反対運動を受けてOpelは計画を断念したという。同社は現在、ボーフム市において雇用者数で最大の企業となっている。
ボーフム市はもともとは炭鉱の町という。主要産業がなくなった後、製造でも東欧や新興市場と比べると魅力を失いつつある。これは、ドイツそのものにも一部当てはまりそうだ。欧州最大の経済力を持つドイツだが、主力の製造業が転機に差し掛かる中、もう何年も景気がぱっとしない状態が続いている。
さて、今回の運動は成功するのだろうか?見通しは明るいとはいえないようだ。
この件でドイツのAngela Merkel首相と電話で話合いを持ったというNokiaのCEO、Olli-Pekka Kallasvuo氏は、「(工場閉鎖の)決意は変わらない」と述べている。「ドイツ市民の気持ちはわかるが、ドイツ製携帯電話はすでにどこのメーカーでも手に入らないのだ」と続けている。そう、独Siemensのモバイル事業部も、その後のBenQ Siemensも、もう存在しないし、米Motorolaもすでにドイツでの製造を中止しているのだ。
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