米Appleの「iPhone」が欧州市場でかべにぶち当たっている。売上げではない。すでに販売されているドイツと英国では、初日の盛況ぶりが大きく報じられた。ドイツでは初日に1万台を売上げたという。問題となっているのは、ネットワークを限定するSIMロックだ。
ドイツ・ハンブルグ地方裁判所は11月12日、ドイツで独占的にiPhoneを提供する独T-Mobileに対し、24カ月の契約加入を義務付ける販売方法は違法だとし、一時的な差し止め命令を出した。これは、T-Mobileのライバルである英Vodafoneの申し立てを受けてのもの。Appleにしてみれば、11月9日に無事に欧州上陸を果たしたとおもった矢先のことだ。
Vodafoneはドイツでも展開しており、ドイツでのシェアは2位。一方のT-Mobileはシェア1位で、2社はライバルの関係にある。今回の差し止め命令は、Vodafoneが11月19日に明らかにし、一気にメディアが飛びついた。T-Mobileは21日、SIMフリーのiPhoneを同日より提供すると発表、上訴と損害賠償要求を示唆しつつ、当面は仮命令に従った格好となる。この件については、11月末〜12月はじめに審問が予定されている。
この背景にあるのは、利用できるネットワークに制限をつけた端末のみを販売することを禁じる消費者保護法の存在だ。欧州連合(EU)加盟国は、EUのポリシーに自国の法律で遵守しなければならないため、各国で法律が似通っていることが多い。以前このコラムで、フランスでiPhone発表が遅れた理由について取り上げたが、フランスでiPhoneを米国モデルで展開するにあたり、Appleおよびオペレータが直面していた問題は、お隣ドイツにもあったということのようだ。なお、英国では契約付き携帯電話のみの販売は合法なのだそうだ。
大西洋の向こう側では、ロック解除とソフトウェアアップデートのいたちごっこが続きそうだが、欧州大陸ではSIMフリーiPhoneが並んで提供されることになりそうだ(11月28日に発売開始となったフランスでは、最初から契約つきと契約なしのiPhoneが店頭に並んだ)。これは、欧州と米国で携帯電話業界のモデルが異なることを示すものでもある。米国ではオペレータが携帯電話を販売するが、欧州ではオペレータと端末ベンダーがそれぞれにビジネスを展開することが多い。
Vodafoneは、iPhone提供でAppleと話し合いを持ったといわれており、契約が成立しなかった最大の理由はAppleが要求していた売上げシェアがあまりに高かったからのようだ。真相はさておき、VodafoneのCEO(最高経営責任者)、Arun Sarin氏は先日の決算発表の席で、iPhoneを「(3Gをサポートしていない、などから)エクスペリエンスに乏しい」とし一蹴している。
なお、T-MobileはSIMフリーのiPhoneに999ユーロの値札をつけている(24カ月の契約付きの場合、端末は399ユーロ、契約は月額49ユーロからなので、合計金額は1176ユーロとなる)。せっかく消費者の選択を保護するのであれば、価格についても上限をもうけないと意味がないような……。
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