欧州で、飛行機内での携帯電話の利用実現に向け、取り組みが進んでいる。10月18日、英国の通信規制当局にあたる英国情報通信庁(Ofcom)が飛行機内における携帯電話通信に関する資料を発表、実装例を提案している。
航空機内での携帯電話の利用については、安全、それにビジネスモデルなどの懸念から、あまり進展していない。だが、通信と航空を重要な産業とする欧州では、欧州連合(EU)が加盟国とその規制当局に対し研究を進めるよう推奨するなど、前向きに扱われている。今回のOfcomの提案は、他の加盟国と共同で進めたもので、欧州の上空を対象とする。
Ofcomの提案では、旅客者の携帯電話が利用するピコセル(小型基地局)を機内に搭載することで機内での通話を実現する。このピコセルが衛星とやりとりし、衛星経由で地上にあるモバイルネットワークに接続する、という仕組みだ。
携帯電話の電波は無線など飛行機の各システムに干渉を与えることから、離着陸時はオフが原則。Ofcomでは、飛行機が上空3000メートルに達したところで、乗務員がピコセルをオンにするよう提案している。もう1つの課題である地上基地局との接続問題については、機内の携帯電話が地上にある基地局に接続しない制御システムで対応するという。
当初、2G(GSM、GPRS)を対象とし、音声通話、データ通信、テキストメッセージなど、通常の機能のほとんどを利用できる。その後の経過を見ながら、3Gなどその他の通信方式に拡大するようアドバイスしている。
Ofcomでは航空規制当局の承認を得た後、早ければ来年の2008年にも、英国登録の航空会社で機内携帯電話サービスの実装がはじまると見ている。
欧州にはすでに、スイスOnAir(仏AirbusとスイスSITAの合弁会社)、英Aeromobile(ノルウェイのオペレータTelenorと航空通信企業の米Arincの合弁会社)などの航空通信サービスプロバイダが立ち上がっている。OnAirはすでに、欧州航空安全庁の認定を受けており、アイルランドRyanair、仏AirFrance、英BMIなどの航空会社が同社のサービスに興味を示しているという。
機内のモバイルサービスといえば、米Boeingの機内インターネット接続サービス子会社Connexion by Boeingが昨年末にサービスを停止したことが記憶に新しい。原因は利用者の伸び悩みとされていたことから、今回の携帯電話サービスでも、技術的課題や規制面での課題よりも、ビジネス面での課題の方が大きいといえそうだ。
もう1つの問題が社会的問題だ。今年夏より、携帯電話の機内での利用に関して反対キャンペーンを繰り広げている英Telegraph紙では、うるさいなどマナーの観点から反対意見が集まっている。
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