日本でもこちらでも車を運転しないので、カーナビには明るくないのだが、こちらに来てカーナビの印象が変わった。
カーナビというとDVDベースなど高価なものだと思っていたが、こちらの人は、カーナビ用のスペースがない古い車に、吸盤式の「TomTom Go」をぺたっと貼り付けていたりする。価格だが、対応地図データにもよるが、200ユーロ代から手に入る。欧州の地図が利用できるハイエンドでも500ユーロ程度のようだ。
このように容易に取り付けられるカーナビなどのナビゲーション端末は、「PND(パーソナルナビゲーション端末)」と総称され、年平均成長率30%ともいわれる成長市場だ。欧州はこの市場で先行しており、電気・コンピュータショップが大々的に売り出している。特にここ1、2年でぐっと普及した感で、友人の車やタクシーに付いていても珍しいと思わなくなった。実際、フランスでは、昨年の年末ショッピングシーズンで最もよく売れた製品カテゴリの1つだった。
欧州では、旧市街をはじめ都市部に一方通行の道路が多い。付近の一方通行情報を知らないと、目的地が見えていながらぐるぐる回るはめになる(わが家の前の通りも一方通行で、いつもタクシーの運転手に道順を説明しなければならない)。これが、新しいモノにあまり興味を示さないと私には見える欧州の人々が、PNDには購入の必要性を見出している理由だと思う。
そのPND市場に変化がおきている。
世界的に見ると、PND市場はオランダTomTomとケイマン諸島Garminが合計で6割以上のシェアを占めるといわれているが、欧州では地元TomTomのシェアは5割と他社を圧倒している(世界3番手は台湾のMio Technology)。
7月23日、そのTomTomが同じくオランダベースの地図データ企業TeleAtlasを買収する計画を発表した。買収金額は約20億ユーロ。TomTomはTeleAtlasの獲得により、操作性や精度を改善するとしているが、コスト削減の狙いもあるはずだ。PND市場では価格競争が起きており、PNDコストの20%程度が地図といわれている。買収後もTeleAtlasは独立して運営されると主張しているが、傘下におさめることでTomTomは割引価格で地図情報を購入できるだろう。TomTomはTeleAtlasの最大の顧客だが、TeleAtlasの地図データは、ライバルのMio、Garmin、それに米Google、フィンランドNokiaなども利用している。
一方で、ライバルのGarminも欧州市場を強化しつつある。
Garminは北米ではシェアトップだが、欧州ではTomTomに大きくリードを許しており、欧州市場強化は課題だ。同社は今年に入り、相次いで欧州企業4社を買収(あるいは買収計画を発表)。すでに所有している英国のディストリビュータを含むと、仏、独、スペイン、イタリアと主要5カ国で現地販売子会社を持つ体制を敷く。これにより、今後欧州でのTomTom対Garminの戦いはさらに加熱しそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス