独Siemensは5月20日、新CEOを発表した。新たにCEOに就任するのはPeter Loscher氏、49歳。製薬会社の米Merck&Co.から引き抜かれたニューフェイスだ。
言うまでもないだろうが、Siemensは世界屈指の大手技術会社。工業企業としては欧州最大規模を誇る。ドイツ人の友人によると、同社のイメージはよく、働きたい会社として人気があるという。日本で言うとどこだろうか。そのSiemensに昨年秋スキャンダルが発覚し、いまだに調査が続いている。
今回明らかになった汚職とは公共事業の入札に絡んだ贈賄行為。主として外国で行われていたようで、報道によると海外に賄賂用の口座を持っていたとか。この賄賂用の口座を通して動いた金額は4億2000万ユーロともいわれている。この贈賄行為は通信部門など数部門で行われていたらしく、ドイツの警察だけでなく、米国など本国以外の国の当局も調査に乗り出している。
巨大企業Siemensは、事業部単位での独立採算性を求める一種の社内カンパニー制を導入しており、今回の汚職事件は、自分の事業部の採算性を高めようとした各部門トップが関与していたようだ。収益性が示せない事業部に対しては、Siemensの経営陣は積極的に切り離していった。
その例が、携帯電話事業で行った台湾BenQへの事業部売却、通信機器事業で行ったNokiaとの合弁会社立ち上げだ。Nokiaの通信機器事業部と合体したNokia Siemens Networksは、スキャンダルに足を引っ張られて発足が遅れたものの、今年4月に何とかスタートにこぎつけた。だが、2005年6月にBenQ売却が決定した携帯電話事業は、結局は立ち行かなくなった。
それまでODMメーカーとしてのし上がってきたBenQは、Siemensという国際的なブランドを手に入れ、本格的な世界進出を目指して「BenQ-Siemens」を立ち上げた。2006年2月、携帯電話業界で最大のイベントである3GSMで同社は、数機種の携帯電話を大々的に披露したし、3月のCeBITでは競合他社をしのぐ大きなブースを構え、アピールしてみせた。
だがSiemensの携帯電話事業部は売却時ですでに5億ユーロもの赤字を抱えた状態で、BenQ-Siemensは早期に軌道を見出せず、翌年秋(2006年9月)には欧州での携帯電話事業を打ち切る方針を発表した。同社は今年、正式に倒産による清算手続きに入っている。
BenQ-Siemensの倒産は、表面上はBenQの経営陣のミスととれるが、Siemens側の計画的倒産だったとみる向きもある。つまり、Siemensとして事業停止するよりも、別の会社に売却し、そこが倒産した方がよいだろうというものだ。実際、これにより職を失ったSiemensの従業員は会社を相手取り訴訟を起こしているともいう。
その一方で、Siemensの株価はこのところ、再建に対する市場の期待を受け、数年来の高値をつけている。新CEOのLoscher氏は、同社初の外部からのCEOという。Loscher氏がCEOに就任するのは7月1日。同氏がどのように巨大船の舵を取るのか、欧州全体が注目している。
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