前回、携帯電話の用途がSMSと通話から広がらないと書いたが、今回は進まないインターネットの利用を中心に、その理由を分析してみたい。
フランスでは、3社あるオペレーターがいずれもインターネットポータルを展開している。最も古いのが最大手Orangeで、1999年に現在の「Orange World」の前身となるWAPベースのポータルサービスを開始した。Orangeによると2326万人いる総加入者に対し、ポータルサービスの月間ユニークビジター数は500万人。つまり、ポータルを定期的に利用するユーザー比率は20%程度ということになる。
これについて、たまたまOrangeの顧客関係部門に勤務する知人がいたので、彼女の意見を聞いてみた。まず最初にあげたのが必要性、次が料金だ。ポータルが提供するニュース、天気予報、エンターテインメントなどは他でも代用できる。Orangeに勤めていながらこんなことをいうのもなんだが……といいながら、「あえて料金を払って、小さい画面で使うメリットがあるのかと思う」と彼女。30代前半の彼女自身も、ポータルを定期的に利用していたのは産休の間だけ。「ベッドの中で静かにニュースが読めるのはいいと思った」という。
産休が終わった現在、ニュースは車での出勤時にラジオで聞いている。家にはTVがあり、会社にはPCがある。なんで携帯電話でわざわざ……というのが彼女の意見だ。
私が感じているのは、携帯電話の使いにくさだ。日本の携帯電話機は、オペレーターが展開しようとしているサービスに合わせて設計されているので、実にナビゲーションがスムーズ。ところがこちらは、携帯電話メーカーは、携帯電話はこうあるべきと自社が描く携帯電話像に合わせて電話を設計しており、オペレーターはオペレーターでサービスを展開する。2者の間での連携が日本ほど強くないので、一般的なユーザーはそれぞれの主張する“こんなことができる”を聞かされながらも、なんだかよくわからないので結局通話とSMSで終わっている、という状態のようにみえる。必要性を感じていないのであれば致命的だ。
私の友人にカメラ付きの「Chocolate」(LG電子)を持っている人がいるが、撮影した画像をMMS(マルチメディアメッセージングサービス)で送るようになるまで1年かかった。実際、Orange社員である先の彼女は、“この携帯電話でこのサービスを使うにはどうしたらいいのか”という顧客からの問い合わせにオペレーターはこたえられないのが実情、と漏らす。
前回、相互運用性の取り組みに関して欧州を評価したが、携帯電話メーカーとオペレーターがそれぞれの利害関係を妥協できずにいるのも欧州らしいな、と思ったりする。これ、矛盾しているようだがそうでもない。
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