欧州ときいてハイテクを連想する人はあまり多くないと思う。どちらかというと、食、ファッションなどの文化、歴史、観光地というイメージをもっている方が多いかもしれない。このコラムでは、あえてハイテクという切り口から欧州を紹介してみたい。
確かに、必ずしもハイテク先進国とはいえない欧州だが、携帯電話の普及率では世界をリードしている。欧州連合(EU)が3月末に発表した数値によると、欧州27カ国の携帯電話の普及率は103%。数字の上では1人1台を上回っていることになる。トップはルクセンブルグの171%、イタリアも134%と高い。欧州のほとんどの国で、パスポートなどの身分証明書を提示すれば外国人でも携帯電話サービスに加入できる。ルクセンブルグは銀行や企業が多いため、171%という数字は、ルクセンブルグに住んでいる人が携帯電話を複数台持っているというよりも、そこにいる間に使う目的で現地のオペレータを利用している外国人が多いからだと思われる。欧州は陸続きで移動が多いので、ルクセンブルグに限らず、行き来が多い人で移動先でも携帯電話に加入しているという人も少なくないはずだ。
プリペイドサービスも高い普及率に一役買っている。日本では犯罪に使われたことからイメージが悪いプリペイドサービスだが、プリペイドでもデータ通信など、契約型(ポストペイド)とほぼ同等のサービスを利用できる。契約型だと、わたしの住むフランスでは1年からの契約となる。契約年数が長いと月額料金も安くなるのだが、なくなったら買い足す方式のプリペイドを好む人は学生をはじめとして多い。このあたりは、お金に対する感覚の違いを感じる。参考までに、欧州主要各国で展開している英Vodafoneの数値を見ると、プリペイド比率はイタリアでは92.1%、ドイツでは54.4%と各国ばらつきがあるが、欧州地区の平均プリペイド比率は66%となっている(2006年第4四半期)。
このように、高い普及率を誇る携帯電話だが、用途となると固定化しているかもしれない。携帯電話は確実に高機能化しているが、欧州ではほとんどの人にとって通話かSMS(テキストメッセージ)のツールにとどまっている。これに、普及し始めたカメラ搭載モデルによるカメラ機能が加わるぐらい。インターネットの利用などのデータ通信は日本に比べると伸びがゆっくりだ。
文字ベースの通信であるSMS、日本では一般的ではないが、欧州では通話と並ぶ重要な通信手段だ。あて先に相手の携帯電話番号を入力するだけでよいというシンプルさに加え、料金が安い。携帯電話で電子メールを設定するのがややこしいことからも、ほとんどの人が携帯電話でメッセージをやり取りする場合はまずSMSを利用している。SMSを利用できる固定電話機もあるし、SkypeからSMSを送ることもできる。このような高い浸透を受け、SMSはマーケティングでも利用されている。たとえばTV番組中、番組の内容に関する簡単なクイズやアンケートをSMSで送るといったものだ。
SMSの成功に欠かせないのが、オペレータ各社が互換性を確保した点だ。相手がどこのオペレータかをまったく気にすることなく、国内・国外を問わずSMSをやりとりできる。さすがはGSM方式を生んだ欧州、相互運用性や標準化といった取り組みは上手だと思う。
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