海賊版大国と言われ続けていた中国が、突如ある日を境にコンテンツ大国になるかもしれない。世界の5大レーベルの1社であるイギリスのEMIを、中国最大の移動体通信事業者であるチャイナモバイル(中国移動)が買収するかもしれないという噂が中国の複数メディアから報道されている。
2007年5月、イギリスの投資グループのTerra Firma Capital PartnersがEMIの未公開株を32億ポンド(約7676億円)で購入したが、この背後にチャイナモバイルがあると中国メディアは報じている。つまりTerra Firma Capital Partnersを通して、チャイナモバイルがEMIに投資したといわれている。またチャイナモバイルは、5大レーベルの残りのワーナーレコード、BMG、ソニーミュージック、ユニバーサルレコードのうちのどこかについても、同様に大型の投資をしようとしていると中国メディアは報じる。
中国移動はこの件について「そんな話は聞いたことがないし、ニュースも見たことがない」と否定しており、またEMIの中国区副総裁の黄佛菁氏も中国メディアの取材に対し「巨額資金を持つプレーヤーがEMIの資産に興味を持っているのは確かなようだが、プレーヤーが誰なのかは、よくわかっていない」とコメントしている。
なぜチャイナモバイルはこのような動きに出るかというと、その理由は北京五輪前に始まるであろう第3世代携帯電話のコンテンツ確保のためだという。現在チャイナモバイルは、第2世代携帯電話向けに「無線音楽倶楽部」という名でマルチメディアコンテンツを提供しており、そのサービスの利用者は5000万人を超える。最近特に中国の海賊版問題がクローズアップされる中、中国屈指のサービスプロバイダーとして問題のないコンテンツ提供を行いたいのではないか、と中国メディアは考察している。
チャイナモバイルは国営企業であり、チャイナモバイルの後ろには巨額のチャイナマネーを保有する中国政府がある。ITの話題ではないが、6月には中国国営の投資会社が米投資会社のBlackstone Groupに30億ドルの出資を決めたことで話題となった。今回の買収話は現在のところ、まだあくまで噂話でしかないが、現実味のある話であり、また今後も似たような話が出てきても不思議ではなさそうだ。
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