中国では、DVDをはじめとした海賊版まん延が一向に改善しないことによる米国のWTO提訴と日欧の第三国としての参加表明に、急ピッチで対策が行われているようだ。中国のメディアはこれまでにないほど正規版推進、海賊版撲滅のアピールに躍起になっている。
本日4月26日は世界知的所有権機関(WIPO)が制定した世界知的所有権の日(World Intellectual Property Day)である。これを意識して行政は知財権保護ウィークと銘打ち、正規版購入推進活動を行うことは例年ある。実際そういう口実で中国各地で脱海賊版を訴えるキャンペーンを行ってはいるものの、それをふまえても2006年に比べてその数は比較にならないほど多い。日米欧から海賊版でWTO提訴に直面する危機に非常に切羽詰った状況で、とりあえず地方政府と一丸となって「正規版推進活動を行っています」という実績を作りたいという狙いが伺える。
行政中心の正規版推進活動の内容は、中国各地のニュースによると、専門家による討論会や、街中に海賊版はNGという内容を訴えるパネルを配置するというのが大半だ。筆者が中国の街のDVD、CD屋を見てまわってみたところ、知財権保護ウィーク開催中にも関わらず、今までと変わりなく営業し、PCソフト屋は半分シャッターをしめた状態で恐る恐る営業していた。海賊版のガサ入れの対象はPCソフト屋なのだろうか。一方中国で最も利用されているオンラインショッピングおよびオークションサイトの「淘宝網」で「vista」をキーワードに数十元以下の価格で絞り込むと、海賊版Windows Vistaが未だ販売されていることが確認できる。
正規版推進記事の掲載の一方で、中国各地から数万、数十万、ときに数百万単位の海賊版の書籍の山を灰にしたり、海賊版のCDやDVDの山を粉砕するのを公開したりする見せしめ的な海賊版撲滅のニュース記事も多数掲載された。
ともすれば、米国の発表以来の一連の活動は、海賊版対策を行っているという証拠づくりにも思えるが、この一連の正規版推進活動や海賊版撲滅活動の結果をWTOの場で示すとき、米国やEU、日本からどのような理解が得られるか。それは今後WTOでの決着後にわかることだろう。
余談となるが、EUによる中国への海賊版についてのWTOの提訴の可能性のニュースよりも、より多くのインターネットメディアが報道したのは日本がアメリカの提訴に第三国として参加するというニュースだった。日本がそのような行動をとるのが意外だったのかどうかは不明だが、多くのこのニュースの感想欄には、読者による「なぜ温家宝首相が訪日して関係改善した後にこういう行動をとるんだ?」といったコメントが書かれている。
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