「華流ITマーケットウォッチ」では、中国・瀋陽に合弁会社を設立し、オフショア開発や中国市場調査を行うメイプルカンパニーの包偉(バオ・ウィ)が、中国のIT事情を紹介する。今回は、現在流行中の「ネット同棲」についてレポートする。
ネット同棲って?
インターネットユーザーが1億人を超える中国には、3000万人以上のネットゲーム愛好者がいると言われている。そして、ここ最近若者の間で流行しているのが「網絡同居(ネット同棲)」という新種のゲームだ。
中国では以前、責任や義務を負わずに済む「試婚(同棲)」が、都市部の若者を中心に流行したことがあった。当時のメディアはこの現象をさかんに取り上げ、中国人の恋愛観や結婚観が開放的になっていることの表れだと指摘していた。また、シンセン週刊が1万538人のネットユーザーを対象に実施した調査でも、同棲生活が「その後の結婚生活に良い影響を及ぼすと思う」と答えた回答者は4675人で、「ある程度は理解するが、完全には理解し難い」とした人(4670人)や、はっきりと反対した人(656人)の数を上回った。
そんな中国の若者の間でいま人気なのが、ネット上で借りたのマンションでバーチャルな生活を楽しむ「網絡同居」だ。「網上人家」「第九城市」「iPartment (愛情公寓)」などが最も有名だが、ほかにも同様のサイトが数十件はある。網絡同居のユーザーは、これらのサイトにある自分の部屋で、同棲相手と一緒に内装を考えたり、ペットを飼ったり、庭の手入れをしたり、仕事の悩みを打ち明け合ったりしている。
網絡同居の使い方は至って簡単。希望者はまず、網絡同居サービスを提供しているサイトに登録する。これで居住する部屋がもらえるので、今度は同居相手を探すことになる。ただし、現実の恋愛と同じく、ここにも男女間のさまざまな駆け引きが存在する。そのため、見栄えのする写真や画像を掲載したり、素敵な家具を揃えたりといった工夫を重ねながら、ユーザーは精一杯自分をアピールすることになる。そして、めでたくカップルになれたユーザーはついに同棲生活を始める・・・という具合だ。
部屋は無料でもらえるが、これは空っぽの空間なので、内装を変えたり家具を買いそろえたりする必要がある。そして、これにはいちいち金がかかる。たとえばiPartmentでは、「Iマネー」という独自の通貨を発行しており、ユーザーは1Iマネーあたり1元(12月14日現時点のレートで約14.5円に相当)で購入したこの通貨と交換して、ダブルベッド(0.6Iマネー)、ソファ(0.4Iマネー)などを手に入れる。ただし、これらの家具類には有効期限が設けられているので、同棲生活を続けたいカップルは、継続的に使用料を支払うことになる(もちろん、オプションを一切買わずに貧乏生活を送ることも可能だ)。
ネット同棲にハマる人々
各サイトで「網絡同居」生活を送っている人の数は、少なくとも数万人にのぼると見られている。iPartmentでは、2004年7月にサービスを開始して以来、35万人以上の「居住者」を獲得しているが、そのうちの約3分の1が同棲生活を続けているという。なお、利用者の多くは20〜30代のホワイトカラーの女性で、居住者の男女比率は1対3となっている。現実世界の居住地別では、広州、北京、上海などの都市に在住している人が多いようだが、これは、そもそもネットユーザーが都市部に多いのに加え、若者の生活習慣や考え方が、都市部から変化し始めていることの表れだという説もある。
網絡同居にはまっているのは、現実の世界で大きなストレスを感じているホワイトカラーの人々で、仕事が忙しく、出会いのチャンスもない・・・そんな人たちが、心の癒しを求めてネット上に集まり、恋愛や同棲生活を楽しんでいるというのが大方の見方である。また仮想の同棲生活なら、現実にするよりもはるかに安上がりなので、なおさら都合がよいといった面もあるらしい。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」