最終更新時刻:2008年7月25日(金) 21時03分

第4回:デジタル時代の著作権法の新たな枠組とは?

長野弘子

2004/09/13 20:20  

現行の法制度が抱える問題点と今後の可能性

 新たな流通経路としての地位を確立したオークションサイトは、これまで想定できなかった知的財産権の問題を引き起こしているが、視点を変えると、既存の知的財産権に関する現行法では対応が難しい領域に踏み込んでいるともいえる。オークションサイトに掲載される商品画像の使用範囲から、肖像の利用、さらには著作物の物理的な「複製」から複製のない「使用」に移行していった場合に、著作権者の権利をどう保護すべきなのだろうか。現行の法制度がかかえる問題点を取り上げつつ、新しい取り組みや法整備の状況について探ってみた。

出品ページの写真は著作権の侵害?

 オークションサイトには、出品物の写真が多数掲載されているが、実はそれらの写真が著作権法上問題になる可能性があるという。たとえば、漫画本の表紙のデザイン、ぬいぐるみなどは著作物と見なされるので、それらの写真は著作物の複製物となる。複製物の私的使用は認められているが、オークションに出品するのは販売目的なので、写真の掲載が適法な行為なのか現在のところ明確にはなっていない。たとえオークションに出品する場合であっても、著作権者に対して写真の使用許諾を取る必要があり、それをしなければ著作権法違反だと主張する権利者もいるという。

 これに対して、ヤフーの別所直哉法務部長は「商品説明のためには写真を掲載せざるをえないので、そこまで権利範囲だと主張されると、サービス自体が成り立たなくなってしまいます。これまでも、商品の写真を撮って新聞の折り込み広告などに使うなど、同じようなケースがあるのに問題にはなっていませんでした。オークションサイトでは、不特定多数の人がアクセスできる大規模なサービスのため、その行為が目につくようになりましたが、もともと同じ性質のものなのです」と語る。

 また、アーティストやタレントの「肖像権」(※注1)の侵害をめぐる問題も浮上している。たとえば、有名タレントを起用した商品ポスターがオークションサイトで販売されている場合、タレント本人や事務所との肖像権利用の承諾はポスターに限られており、ポスターの転売までは想定されていない。著作や特許と同じように、承諾により権利が譲渡され、あとから権利の追求はできなくなるとの見解もあるものの、現時点では、最初の承諾がどこまでおよぶのかという明確な判断基準は存在しない。

 タレント本人や事務所が、オークション出品者の1人1人と直接契約を結ぶことは不可能なので、権利配給がどこまでおよぶかを明確にする必要がある。現在、ヤフーではメディア企業や音楽プロダクションの権利団体である日本音楽事業者協会(音事協)と肖像権の侵害に関する対策を協議している。そこで個々のケースを取り締まるのは困難であると説得をしているが、まだ完全に共通理解があるとは言えない状況だという。

フェアユースの概念が不在:日本の著作権法

 オークションサイトに限らず、インターネット・サービスでは、現行の著作権法で対処できないケースが多い。たとえば、幅広く使われている検索エンジンだが、検索結果にはURLだけではなくそのページのコンテンツの一部も掲載される。そのコンテンツに創作的表現があり、それが著作物だと評価された場合、その複製行為をどう考えるのか?その顕著な例が、最近日本版のサービスが開始された「Google ニュース」である。Googleニュースは、610サイトからの最新ニュースを収集し、ユーザーのために一括して提供する検索サービスの一種である。新聞社や雑誌社の自社ページに掲載したコンテンツがグーグルのページにコピーされ、写真がサムネール表示される。グーグル広報担当は「削除の問い合わせがあった新聞社に対しては、『Googleニュース』用に記事をインデックスしないようにしています」と説明しているが、このサービスが許諾なしに複製物を使用する著作権侵害行為に当たる可能性もある。

 こうした問題に対して、米国の著作権法では、文化の健全な育成と発展のためには、権利者の利益を不当に害しない程度で著作物の公正な利用を認める「フェアユース」という概念がある。サムネール表示に関しても、フェアユースとして考えられるので著作権侵害に当たらないという判例が米国で出ている。ドイツでも、自由利用という概念があるが、日本ではこうした一般規定は存在せず、著作権法第30条の私的複製や同第32条の引用行為を認める規定のように、個別に例外的な利用範囲を列挙するのみになっている。

 フェアユースの概念を著作権法に導入すべきかどうかは、数年にわたり検討されているが、いまだに結論は出ていない。その理由のひとつは、日本の著作権法が個別に細かく規定を列挙した体系になっており、フェアユースという大枠に当てはめることのできない規定が多いからだという。牧野総合法律事務所の弁護士でありクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのメンバーでもある若槻絵美氏はでもある若槻絵美氏は、「日本の著作権法は、とくに隣接権者の権利の部分はバラバラで、一本筋の通った法律とは言えません。著作権法を本当に理解している人が少ないのは、法律が複雑すぎるからなのです。著作者の権利を重視するという法の目的が底辺に流れているというよりは、産業保護に傾いており、それぞれの業界に有利なように法律が作られている部分が大きいのです」と説明する。

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