ネットオークションにおける海賊版、偽ブランド品の流通が社会問題化しているが、初回連載では、具体的にどんな不正商品が流通しているのか、また、取り締まるのがなぜ難しいのかといった知的財産権侵害物の実態を探ってみた。
これらの問題の背景には、テクノロジーの進歩に既存の法制度、商習慣が対応できていないことがあり、関係者が協力しながら解決策を模索する必要がある。今回は、知的財産権の保護に関して不満を募らせる権利者側の主張と、それに対して困惑するオークション運営者の本音、さらには敵対から協力体制へと変化する両者の関係について迫る。
対応に不満をつのらせる権利者たち
ネットオークションで、海賊版や偽ブランド品の販売が懸念されるようになったのは2000年のことだ。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)戦略法務室の葛山博志室長は、「Yahoo!オークションが登場した当時は、無料サービスで身元確認が徹底していなかったこともあり、海賊版の出品がすでに問題になっていました。ユニオン・デ・ファブリカン、JASRAC(日本音楽著作権協会)、日本映像ソフト協会などで構成される不正商品対策協議会は2000年に、出品者確認の確実な実施とその徹底を求める要請書を送っています」と説明する。 権利者9団体からなる不正商品対策協議会は2000年10月、出品物に対する常時監視などの5つの措置を求める要請書をヤフーに提出している(表1)。
構成団体 |
(社)コンピュータソフトウェア著作権協会 (社)日本映像ソフト協会 (社)日本音楽著作権協会 (社)日本芸能実演家団体協議会 日本国際映画著作権協会 日本商品化権協会 (社)日本レコード協会 ビジネス・ソフトウエア・アライアンス フランス公益社団法人ユニオン・デ・ファブリカン |
2003年10月に ヤフーに送付された要請書の内容 |
1. 出品者の身元確認の確実な実施とその徹底 2. 出品物に対する常時監視および不正商品発見時における削除などの確実な実施とその徹底 3. 違法出品者の出品を阻止するシステムの構築 4. 同協議会または当協議会加盟団体が不正商品に関わる出品者の連絡先に関する照会などをした場合の責任ある協力体制の確立 5. 不正商品の流通を阻止するための具体的な広報・啓発活動の促進 |
しかし、海賊版の出品が把握できないほど急増したのは、昨年になってからだという。それまでは、刑事摘発により一定の抑止効果があったが、オークションの市場での浸透により、海賊版の出品は減るどころか増加の一途を辿っている。
そこで、2003年7月末から、ACCSはYahoo!オークションの出品者への質問機能を使い、海賊版出品者のすべてに警告メールを送るという作戦に出た。
葛山氏は 「オークションを批判する前に、まずは自分達でやってみようとしたのです。我々の対象とする海賊版はYahoo!オークションで常時1000件以上あるという認識でしたから、これを1件ずつ刑事摘発するのは無理だし、何らかの措置をすぐに講じなければいけない。そこで、海賊版を販売していると思われる4000件の出品者に対して、警告メールを送ったんです。その後、出品を削除したかどうかを毎日チェックしましたが、すべて手作業ですから、我々の負担も物凄いものでした」と語る。しかし、この警告メールの抑止効果もまた一時的で、効果は次第に薄れていったという。
「機動戦士ガンダム」を世に送り出したサンライズも、中国発の海賊版DVDの大量流入に手を焼いている。同社法務部の巌本陽一郎係長は、ネットオークション運営者の初期の対応をこう語る。
「2001年には、取引先やファンの方々から、Yahoo!オークションで多数の海賊版DVDが売られているという連絡をいただくようになりました。そこで、ヤフーに削除依頼を出したのですが、カスタマーサポートからは『確認します』という返事が来ただで、相変わらず海賊版の出品は続いていました。メールを何回出しても同じような対応だったので、怒って電話したところ、我々が正当な権利者であることを証明する何枚もの書類の提出を求められたのです。対応を回避するための口実としか思えず、怒りを感じましたね」
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