クリスマス前、筆者は「Instagram」を「iPhone」から削除することにした。ソーシャルメディアを使用すると、ほぼ瞬時に過度な刺激を受けるようになっており、そのようなアプリに支配されているように感じ始めていたからだ。2022年の年末を過ごす最善の方法は、それらのアプリをやめて、脳を休ませることだと判断した。
絶え間なく生成されるコンテンツを漫然と消費する生活をやめたくなったのは今回が初めてではないし、Instagramをスマートフォンから削除するのも初めてではなかった。Instagramに費やす時間が増えては距離を置いてみるものの、そのうちにデジタルコンテンツが恋しくなり、今度こそはInstagramともっと健全な関係を築いてみせるという決意とともにまたInstagramのある生活に戻る、というサイクルを4年間は繰り返してきた(決意はもろいものだったということだ)。
ソーシャルメディアに多くの時間を費やすことの危険性は誰もが認識しているが、最近の調査では、そうした問題がより明確になってきている。米疾病予防管理センター(CDC)は2月、年に2回実施している青少年の危険行動に関する調査「Youth Risk Behavior Survey」の結果をまとめたレポート(PDFファイル)を発表した。それによると、高校生の少女57%が持続的な悲しみや絶望を経験しており、2011年の36%から大幅に増加しているという。
ソーシャルメディア、特にInstagramの普及が10代の少女の間でまん延しているのメンタルヘルスの問題に重要な役割を果たしていること、そして、ソーシャルメディアの影響は因果的なものではなく相関的なものにすぎないと主張する研究の誤りについて、社会心理学者のJonathan Haidt氏は詳しく調査を行った。Haidt氏はソーシャルメディアの影響について、因果関係があると考えており、ソーシャルメディア研究の分析を通してその理由をニュースレター「After Babel」で説明している。
Haidt氏はニュースレターで、「2015年の時点で、12歳の少女が毎日何時間もかけて自撮り写真を撮影、編集、投稿して、友達や仲の悪い人、見知らぬ他人がその写真についてコメントできるようにすることがすでに当たり前のことになりつつあった。同時に少女らは、際立った容姿を持ち、華やかな生活を送っている(ように見える)ほかの少女や非常に裕福な女性有名人の写真を見ることにも日々何時間も費やしていた」としている。「Instagramに1日何時間も費やしている分、睡眠や運動、そして、友達や家族と過ごす時間が犠牲になっていた。そうした状況が及ぼす影響を、われわれは予想していただろうか」
筆者がInstagramを頻繁に使っていた15歳のころ、ソーシャルメディアによって、友達の輪が広がり、自分が興味を持ったことをより深く探求できるようになっただろうか。答えはイエスだ。Instagramのおかげで、大学時代に何人かの親友と出会えただろうか。これも、イエスだ。Instagramが自分の人生で大きな比重を占めていたことは、人生に良い影響をもたらしただろうか。思春期を振り返ってみると、良い影響をもたらしたとは言えない。それでは、悪い影響をもたらしたのだろうか。よく分からない。
ただし、確かなことが1つある。スマートフォンにインストールされたInstagramは、あなたを悩ませ続ける迷惑な友達のようなものだ。気分が乗らないときでも、コミュニケーションを取ったり、自分の生活を細かく共有したり、フォロワーに見てもらったりして、あのドーパミンが大量に放出される甘美な興奮を体験することを絶えず要求してくる。Instagramで自分の生活を共有しよう、という気持ちに駆られるのだ。立派なオンラインコミュニティーを作り、成長させていくことには利点もあるが、必ずしも共有しなくてもよいものもある。
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