寿司チェーン店をはじめとする飲食店などで撮影した不適切動画の投稿による炎上が続いている。どれも、飲食店などで客として不衛生な行為や問題行動を起こし、自ら撮影してSNSに投稿、炎上しているというパターンは同じだ。なぜ同じパターンの炎上が続くのか。防ぐためにはどうすればいいのだろうか。
炎上動画の多くは、高校生などの若者によるものであり、InstagramやTikTokなどに自ら投稿している。
たとえばスシローで湯呑みや醤油差しをなめ、レーンに回っている寿司に唾液をつけた動画を撮影、投稿した高校生は、大炎上。スシロー側が刑事民事で訴訟するとし、賠償金は億単位に上るともいわれている。高校生は、高校名や本名が特定された上、ネットにさらされており、高校には苦情の電話が殺到。高校生は自主退学したと伝えられている。
はま寿司で使用済みの箸を使い、容器から直接ガリを食べる動画を投稿して炎上したのも高校生だ。高校生は高校のサッカー部のユニフォームを着用していたことから、高校名と本名が特定、ネットにさらされている。高校には問い合わせが殺到し、サッカー部は活動停止、当人も学校に来ていないという。
どの動画もネットで拡散され、まとめページや記事などにも掲載されている。本名を検索すると事件が表示されるデジタルタトゥー状態となっており、退学など実生活に影を落とす事態につながってしまっている。
店舗のトイレでライターに火をつけ、火災報知器を鳴らして逃げ出した動画を投稿した女子高校生もいる。こちらも高校名や本名が特定され、ネットにさらされている。この動画では撮影していた友だちも映り込んでおり、女子高生はカメラ目線でYouTuberさながらに解説を入れている。
これらの動画の多くは24時間で自動的に消えるInstagramのストーリーズに投稿されており、中には鍵をかけたアカウントもある。つまり、多くの人に見てもらいたいとか拡散したいわけではなく、仲間内での悪ノリ、悪ふざけのつもりで投稿しているだけなのだ。
しかし実際は、動画を見た友だちが保存の上、他のSNSに投稿したり、YouTuberに通報したりして炎上につながっている。24時間で自動的に消えても保存、転載はでき、保存された動画が残ってしまっている状態だ。
この動画と同様、過去の炎上動画も友だちの笑う声などが入っているものが多く、仲間内ウケを狙って投稿されたものがほとんどだ。しかし実際は、不特定多数が見ることとなり、常識から逸脱したモラルのない行為が批判を受け、炎上につながってしまっているのだ。
Twitter、Instagram、TikTokなど、投稿された場所こそさまざまだが、過去にも数度炎上ブームが起きている。その度に、一度炎上が続くとまったく同じパターンで続いている。
特に寿司チェーン店の炎上は、スシロー、くら寿司、はま寿司…とさまざまなチェーン店で炎上動画が続いた。そのうちくら寿司の、一度とった寿司を笑いながらまたレーンに戻したり、皿を回収するシステムにヘディングするように皿を押し込んだりする動画は、4年前に投稿されたものだった。
4年前には問題にならなかったのに、類似動画が炎上している今、掘り返されて炎上しているのだ。SNSで炎上したり、メディアに報道されたりすることで、他のユーザーが「このような動画は炎上する」ことを学ぶ。そして、他の店でも同じようなことが起きていないか積極的に探して、あえて炎上させていると考えられるのだ。
炎上すると、退学や内定取り消しなどにつながることもあり、デジタルタトゥーとして動画や個人情報がネットに残り続けることになる。このような炎上を起こさないためにはどうすればいいのだろうか。
そもそもこのような問題ある行為はしないことが大前提だ。また、他人が見て不快に思ったり、問題視されたりするような動画は投稿しないことだ。鍵をかけるなど公開範囲を制限していても、24時間で消えるストーリーズでも投稿してはいけない。世間やメディアが炎上に注目している時は普段より炎上が起きやすい状態となっているので、より一層注意が必要だ。
筆者はさまざまな学校で講演活動をしている。炎上が騒ぎになっている最中に、連日報道されていた炎上事件を当然知っているものとして紹介したところ、知らない学生がいてがくぜんとしたことがある。大人は聞き飽きるほど報道を見聞きしているにも関わらず、肝心の注意してほしい若者たちには一切届いていなかったのだ。
新聞やテレビなどのニュースを見ない学生は多く、SNSで流れてくるエンタメ系ニュース以外は見ないと言い切る学生もいる。つまり、いくら連日報道されていても、ニュースを一切見ない学生は、どのような投稿が炎上し、炎上するとどのような目にあうかを知らないままとなってしまうのだ。だからこそこのような事態が繰り返されているというわけだ。
しかし、迷惑行為をすると店舗に甚大な迷惑がかかる上、未来ある若き投稿者自身の人生にも暗い影を落とす可能性が高い。
周囲の大人は、どのような行為はいけないのか、どのような動画を投稿してはいけないか、炎上するとどのような目に合うのかを、反面教師として口頭で伝えてほしい。そして、このような悲劇を防いでいただければ幸いだ。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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