シリコンバレーと日本においてアーリーステージのスタートアップ投資や日本企業とグローバルスタートアップの新規事業創出を行うスクラムベンチャーズは、2月8日に創業10周年を記念したイベント「SCRUM CONNECT 2023」を開催した。
「日本企業×スタートアップ:オープンイノベーションの現場から」と題したパネルディスカッションでは、同社が提供するオープンイノベーションプログラムに参加する大手企業3社の担当者が登壇し、オープンイノベーション成功のカギについて語り合った。
スタートアップ企業や自治体などとオープンイノベーションによる共創に取り組んできた中での失敗について、三菱重工業 成長推進室事業開発部 次長の五味慎一郎氏は「大きく失敗した事例が2つあった」と語る。
「一つは技術の見極めをせずに走り続けて、社会のニーズに合致していないことに気付くタイミングが遅れてしまった。イグジットをどこにするかも非常に大事なポイントだと思う。もう一つは技術面を見すぎて深みにはまっていくことがあった。本来は技術の究極性を追求するのではなく何を解決するのかが重要なのに、軸がないとずれていってしまう。われわれビジネスデベロッパーとして、その視点をずらさないようにつねにガイダンスしていかなければならないと認識した」(五味氏)
東日本旅客鉄道(JR東日本) イノベーション戦略本部 ユニットリーダーの佐藤勲氏もオープンイノベーションには「目的」が重要だと語る。
「“日本企業あるある”だと思うが、オープンイノベーションやデジタルトランスフォーメーションは手段であり目的ではないのだが、それをやること自体が仕事になっていたような時期が4〜5年前にあった。そのときは『これって誰にとって楽しいんだ?』とか『誰が喜ぶんだ?』というのが分からなくなった。たまに悩むときは、『このイノベーションは誰が幸せになるんだ』とか『何がいいんだっけ?』と思い返すことが大事だと思っている」(佐藤氏)
住友生命保険 上席執行役員兼新規ビジネス企画部長 SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者の藤本宏樹氏は「奇をてらって失敗した」と語る。
「企業のブランディングの核には独自性のあるサービスや商品が必要ということで『Vitality(バイタリティ)』という健康増進型保険を導入したが、次の柱を作るためにオープンイノベーションの仕事に来た。社内で『あいつらは何をやっているんだ』と思われないように面白いことをやろうと考えて、AIで何をするとか、保険のトラックを走らせるとか、奇をてらったことをやった。パートナー企業は素晴らしいサービスを提供していたが、われわれが何をやるのかという大きな目的やビジョンを描かずに目立つこと、新しいことをやろうとしたためうまくいかなかった。オープンイノベーションによってどういう目的を達成するのかという軸足を最初に定めることがすごく大事だなと痛感した」(藤本氏)
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