パナソニック エレクトリックワークス社は2月10日、効率の良い燃料電池の開発につながる「超音波式水素流量濃度計」の受注を開始すると発表した。高湿度下の水素流量、濃度を同時計測でき、水素投入のタイミングや量を最適化できる。
カーボンニュートラルに向けた動きが加速する中、水素エネルギーの利用促進に向けた取り組みが活発になる中、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する燃料電池が注目を集めている。しかし、燃料電池は、供給する水素を一度に全て反応させることが難しく、未反応の水素は循環させて再利用するため、循環部の水素は高温、高湿状態になってしまうという課題があった。このため、水素の状態把握ができず、最適な発電制御が難しかった。
超音波式水素流量濃度計は、高湿度下の水素流量、濃度の同時計測を実現。従来、高温高湿となった循環部の水素流量、濃度は直接測定ができず、水素の量、発電量、温度、圧力等のデータから水素流量、濃度を推定し、新たな水素の供給タイミングや、排水、排気タイミングを制御していたとのこと。今回、水素流量、濃度の同時計測が可能になったため、燃料電池開発の高効率化や、高耐久化の開発に貢献できるとしている。
パナソニック エレクトリックワークス社スマートエネルギーシステム事業部スマートメータデバイス技術部の三好麻子氏は「循環部における水素の状態を見える化できれば、最適制御につながり、燃料電池の開発に役立つ。パナソニックでは2020年に開発のプレスリリースをしており、試作品の提供を通じ、高湿度下における素流量、濃度の計測に強いニーズを感じ取った」と受注開始に踏み切った背景を話す。
開発の元になっているのは、パナソニックがガスメータ向けデバイス開発で培った超音波計測技術と流体制御技術。ガスメータ用超音波流量計に使われていた、流体制御、超音波センサ、時間計測といった技術をいかし、開発に結びつけたという。「ガスと水素は気体という共通点がある。ガスメーターの技術をベースに水素向けに特化して開発した」(三好氏)とのことだ。
流量、濃度に加え、温度、圧力、湿度の常時モニタリング機能も備え、燃料電池の内部状態をリアルタイムで把握。最適制御することで、燃料電池の発電効率や耐久性の向上に結びつける。データはデジタル出力、アナログ電圧出力で取得でき、0.01秒間隔での測定により、流量、濃度の早い変化も捉えられる。
超音波式水素流量濃度計は、燃料電池の開発企業や研究所などの開発向けに提供していくとのこと。燃料電池の開発環境をメインターゲットに据えているが、水素ボイラーやタービン、水電解装置での水素計測などへの活用も目指す。
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