ソニーグループは、2022年度第3四半期(2022年4~12月)の連結業績を発表した。売上高および金融ビジネス収入は、前年同期比10.7%増の8兆4762億円、営業利益は同1.5%増の1兆797億円、調整後営業利益は同5.2%増の1兆519億円、税引前利益が同0.8%増の1兆357億円、当期純利益が同4.9%増の8089億円となった。
また、第3四半期業績(2022年10~12月)は、売上高および金融ビジネス収入は、前年同期比12.6%増の3兆4129億円、営業利益は同7.8%減の4287億円、調整後営業利益は同8.5%増の4287億円、税引前利益が同13.6%減の3986億円、当期純利益が同5.6%減の3268億円となった。
ソニーグループの十時裕樹副社長兼CFOは、「第3四半期の営業利益は減益となっているが、映画分野における事業譲渡益として702億円の計上もあり、過去最高となった前年同期に迫る高い水準である」と述べた。
一方、2022年度通期業績見通しは、売上高および金融ビジネス収入は、11月公表値に比べて1000億円減とし、前年比15.9%増の11兆5000億円。営業利益は200億円増とし、同1.9%減の1兆1800億円、税引前利益は据え置き、同0.2%増の1兆1200億円、当期純利益が300億円増の同1.4%減の8700億円とした。
セグメント別の第3四半期(2022年10~12月)業績と、通期見通しの修正についても説明した。
ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の売上高は前年同期比53%増の1兆2465億円、営業利益は25%増の1162億円と大幅な増収増益となった。また、通期見通しは、売上高で前回公表値を据え置き3兆6300億円としたが、営業利益は150億円増の2400億円とした。「第3四半期はハードウェアの販売増加や為替の影響により売上高が大幅に増加。自社制作ゲームソフトの販売が増加したことが大幅な成長につながった。『PlayStation 5』(PS5)の販売台数は710万台となり、2022年12月末までの累計販売台数は3200万台を突破した。通期の販売見通しは1900万台としており(従来は1800万台の計画)、オペレーションの最適化により、強い需要に応え、1台でも販売できるように全力で取り組む」と述べた。
だが、「PS5は、まだお客様の手元には十分に届いていない。オペレーションを強固なものにして、1台でも早く届けたい」としたほか、「生産、販売を大幅に拡大したPS5と、2023年2月から発売予定の『PS VR2』の在庫の増加が顕著になっている。在庫水準は、PS5のサプライチェーンや物流のリスクが、いまだに解消していないことを勘案し、第4四半期の販売計画を確実に達成させること、PS5の普及を最大化することを目的に引き上げている」などとした。
PS VR2の発売に向けて、30以上のタイトルを用意しているという。
2022年12月のMAU(Monthly Active Users)に占めるPS5ユーザーの割合は約3割に拡大。PS5ユーザーの『PS Plus』加入比率やプレイ時間、平均支出額などは、『PS4』ユーザーを大きく上回っているため、PS4ユーザーのPS5への移行を促進していくという。
PS5のMAUの3割弱は、これまでPS4を利用したことがないユーザー層であり、PS5の普及により、新規ユーザーの獲得が進んでいることも示した。
PSユーザーの総ゲームプレイ時間は前年同期を3%下回ったものの、前四半期からは6%増となり、2022年12月は、2022年11月比で14%増となっており、「PS5の普及とヒットタイトルの貢献により、ユーザーエンゲージメントは回復基調にある」と分析した。
PS向けソフトウェアでは「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」が11月9日の発売から10週間の販売が1100万本を突破し、同期間のファーストパーティタイトルとしては過去最高を記録。今後、「Marvel's Spider-Man 2」などの強力なタイトルが控えていることに加えて、ソニーグループが持つ人気IPのPC向けゲームソフトへの展開が進んでおり、売上貢献が着実に増加。BUNGiEでは、2月に発売予定の拡張コンテンツである「Destiny 2 Light fall」の予約が積みあがっているという。
「PS5の普及拡大を軸に、ゲーム事業の成長の再加速に向けたポジティブなモメンタムが作れている」と、事業成長に自信をみせた。
音楽分野の売上高は前年同期比23%増の3637億円、営業利益は14%増の630億円。通期見通しは、11月公表値から変更はなく売上高は1兆3700億円、営業利益は2650億円とした。「為替のプラス影響や、ストリーミングの売上げ増加が貢献している」という。
第3四半期のストリーミングの売上げは、音楽制作で33%増、音楽出版で60%増と伸長。Spotifyの週次グローバル楽曲ランキング上位100曲に、平均38曲がランクイン。12月9日に発売したシンガーソングライターのSZAのアルバム「SOS」は、Billboard 200において、7週連続1位を獲得した。また、Spotifyでは2022年のストリーミング回数トップ5のアルバムすべてにソニーミュージックパブリッシング所属のソングライターが参加しており、「業界トップとしてのポジションがより強固になっている」と述べた。
映画分野の売上高は前年同期比28%減の3315億円、米ドルベースでは42%減となった。営業利益は83%減の254億円。通期見通しでは、売上高が前回公表値から500億円減の1兆4000億円、営業利益は据え置き1150億円とした。
「前年度に大型ヒットがあった反動などにより、大幅な減収減益となった。米国における2022年の劇場興行収入は、コロナ禍での制作の遅れなどから公開作品数が少なく、2019年の6割程度の収入に留まっている。だが、2023年3月以降は、大型作品の公開が本格化することから、コロナ前の水準に回復することを期待している」と述べた。
また、アニメ配信事業のCrunchyrollでは、有料会員数が1000万人を突破。日本アニメの海外での劇場配給では、「ONE PIECE FILM RED」のヒットなど、着実に事業が拡大しているという。また「グランツーリスモ」や「ゴッド・オブ・ウォー」など、10作品以上のゲームIPの映像化ブロジェクトが進行しているほか、米国で映像化した「The Last of Us」の第1話の視聴者数が約2200万人に達し、それにあわせて、2020年に発売したPS4向けゲームタイトルが再び1位を獲得するなど、ゲームカタログの販売にも好影響を与えているという。「事業間連携を通じた多面的なIPの活用により、IPの価値をさらに高めていきたい」としている。
エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野の売上高は前年同期比10%増の7528億円、営業利益は1%増の811億円となった。通期見通しは売上高が前回公表値に比べて300億円減の2兆4800億円、営業利益は据え置き1800億円とした。
為替のプラス影響やデジカメの増収が貢献。だが、テレビは減収の影響があったという。「景気減速や、テレビをはじめとする一部カテゴリーでの市場環境の悪化の影響を最小限に抑えた。中国でのコロナ感染の再拡大によるサプライチェーンの混乱については、販売への影響を出さない程度にコントロールできている。2023年度にかけて、事業環境は一段と厳しくなると想定しており、テレビの需要も弱い。第4四半期の販売計画はより保守的に見直すとともに、2023年度に悪影響を持ち越さないことや、事業構造の強靭化に向けた取り組みを前倒しで進めることを最重要課題に位置づけている」と語った。
イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の売上高は前年同期比28%増の4172億円、営業利益は31%増の849億円。通期見通しは、売上高は前回公表値から200億円減の1兆4200億円、営業利益は据え置き2200億円を見込む。為替のプラス影響と、モバイル機器向けイメージセンサーの増収が貢献。第3四半期としては、売上高、営業利益ともに過去最高になったという。「モバイルセンサーの大型化や高画質、高性能化のトレンドが確信でき、イメージセンサー市場におけるシェア拡大に向けた中長期的な生産キャパシティの増強投資についても検討をしていく。また、車載向けセンサー事業の売上高は、2022年度には前年比でほぼ倍増となっている。2023年度も高い成長率で拡大すると見込んでいる」と語った。
金融分野の金融ビジネス収入は前年同期比24%減の3590億円、営業利益は54%増の543億円となった。通期見通しは、金融ビジネス収入は据え置き1兆3100億円、営業利益も据え置き2200億円としている。
会見で十時副社長兼CFOは、2023年度の方向性についても言及。「2023年度は第4次中期経営計画の最終年度となり、次期中期経営計画の立案を行う重要な1年となる。次期中計における最重要テーマは、景気サイクルの谷を越えた先のソニーグループのさらなる成長戦略である。2023年度は逆風のなかでの事業運営が必要になると見ているが、各事業において、足元の課題に迅速に、しっかりと対処しつつ、将来に向けた仕込みも着実に進めていく。事業や人材の多様性をさらに進化させ、事業ポートフォリオのレジリエンスを高めるとともに、成長市場での新たな価値創造に挑戦していく」と述べた。
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