2022年は、仮想通貨が環境に与える悪影響がはるかに小さくなった年だ。世界で2番目に規模の大きいブロックチェーンプラットフォームのイーサリアムが、二酸化炭素(CO2)排出量を99%以上削減したためだ。これにより、2022年に8630万トンのCO2を排出したと推定されるビットコインがさらに目立つ格好となった。
だがここに来て、原子力が助け船となる可能性が出てきた。Cumulus Dataが、ペンシルバニア州サスケハナ郡にある原子力発電所に接続されたデータセンターを完成させたのだ。計画では、ビットコインマイニング(採掘)会社のTerawulfが、2023年内にこのデータセンターにホスティングを開始するという。Cumulus Dataが米国時間1月17日に完成を発表したこのデータセンターは、米国で初めて、原子力発電による電力を用いたビットコインマイニング施設とされている。
つまり、このデータセンターにおけるビットコイン採掘は、CO2をほとんど排出しない。
ビットコインのマイニングは、膨大な量のエネルギーを必要とする。複雑なビットコインの暗号問題を最も早く解いたコンピューターに新しいビットコインが付与されるため、世界中のコンピューターが計算競争を繰り広げているからだ。ビットコインマイナー(採掘者)は、競争力を高めるために、この計算プロセスだけを行うコンピューターリグを大量に倉庫に設置し、膨大な量の電力を消費している。
再生可能エネルギー源のほうが安価な傾向にあるため、ビットコインマイナーは、太陽光や風力、水力を利用する発電所の近くマイニング施設を設置することが多い。推定では、ビットコインの約4割が再生可能エネルギーを使って採掘されているという。この点を根拠に、仮想通貨の推進派は、ビットコインは再生可能エネルギーの利用を促進しており、実際には環境に優しいとの主張を繰り返している。それでも、ビットコインによるCO2排出量が膨大なことに変わりはなく、その削減手段として原子力エネルギーにますます目が向けられている。
前述したCumulus Dataの取り組みのほかにも、多くの計画が進んでいる。エネルギー事業を手がけるスタートアップのOkloは、小型原子力発電所の建設を計画しており、ビットコインマイニング企業のCompass Miningと20年間の契約を締結した。また、ビットコイン推進派のマイアミ市長は、中国のビットコインマイニング業者を誘致しようと、同市の原子力発電による潤沢な電力の利用を呼びかけた。
コンピューターに計算問題の解答を競わせるビットコインのマイニング方式は、プルーフ・オブ・ワーク(Proof-of-Work:PoW)と呼ばれる。この方式の狙いは、ビットコインの改ざんを不可能にすることだ。PoWではこのシステムを覆すには、ビットコインのネットワーク全体の51%以上にあたる演算能力を支配しなければならない仕組みになっている。イーサリアムは2022年、PoW方式からプルーフ・オブ・ステーク(Proof-of-Stake:PoS)と呼ばれる方式に切り替えた。PoS方式ではマイナーは一定量のコインを担保としてネットワークに提供し、これによりブロックを「検証」する役割に選ばれた場合に、イーサリアムトークンを報酬として獲得できる仕組みだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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